お祭りや縁日が醸し出す非日常的な高ぶりは、もしかすると屋台の存在によってもたらされているのかもと思ったことはありませんか。そのくらい縁日の屋台は不思議な魅力に満ちています。祇園祭、節分祭、弘法さんに天神さん、屋台が並ぶお祭りや縁日の数々をとりまとめて紹介するとともに、少し掘り下げたところも覗いてみます。
神社仏閣に参拝した折、境内の一画に屋台で並んでいて、リンゴ飴やたこ焼きなど食べ物、あるいはそのほか何かの販売を行っていると、そぞろ興味が惹かれてしまうものです。普通の店舗で買うのと比べて高いのか安いのか、モノがいいのかどうか、冷静な判断をもって観察をしてみると軒並みマイナス評価に落ち着いてしまうのは確かですが、それでも気になるのが境内の屋台なるものではないでしょうか。
その手の屋台が並ぶのは、たいていはお祭りなど縁日と相場が決まっています。縁日であるがために、気持ちも高揚しているから、気持ちも惹かれてしまうのでしょう。実際に関わるかどうかはともかくとして、そうした的屋っぽい屋台をざっと概観してみます。
京都では一年を通してさまざまなお祭りが催されています。京都三大祭と呼び習わされているのは、5月の葵祭であり、7月の祇園祭、そして10月の時代祭です。市の観光協会では、ここに8月の五山送り火を加えて四大行事なる言い方が最近は行われているようですが、これらのお祭りの中で大々的に屋台が出されるものというと、祇園祭ぐらいです。
昭和時代のような過渡期であれば、風俗史的にもよく指摘されているように、この手の屋台・露店にはヤクザの経済活動として行われていた一面がありました。現在ではそうした手合いが全くなくなっているかどうかまでの断言はできませんが、日時の指定を受けて京都府警に登録をすることで出店の許可が下りるシステムになっているので怪しげな要素は格段に少なくなっているはずです。
祇園祭の屋台もそうした管理を受けているので、前祭の巡行前の2日間(15日宵々山、16日宵山)、出店場所も室町通・新町通・烏丸通(それぞれ三条通〜仏光寺通のあたり)に限定されます。
一方、実店舗を構えている飲食店等が店先にテーブルを出して屋台風に拡大営業をしているケースもあります。こちらは的屋っぽい屋台とは位置づけも変わり、出る出ないも年によって変わってきますので一概には言えません。過去の記録をネットで探して、人気になったところがあればチェックをしておくぐらいの準備はしておいてもいいのではないでしょうか。
祇園祭以外で、屋台・露店が大々的に出店されるお祭りで有名なところといえば、吉田神社の節分祭があります。2月2日の前日祭から当日祭(2/3)の2日間は、吉田神社の参道にずらりと露店が並び、壮観といっていいくらいの景色を作ります。節分祭は2月4日の後日祭もありますが、この日は屋台は出ないようです。たぶん、前述した京都府警の管理システムに準じてのことなのでしょう。
ともあれ、2日間とはいえ、トータルで500を越える出店が参道を埋め尽くし、お祭り特有の焦げた泥臭い匂いを楽しむにはもってこいの環境を作ってくれます。
以上、お祭りの日特有の露店・屋台のお話ですが、この手のお店と切っても切れないのが市の日です。京都では毎月21日の弘法さんと25日の天神さんが有名です。一年でそれぞれ12回開かれる中で、最初と最後は、初天神と終い天神、初弘法と終い弘法と呼ばれ、出店の数も多くなります。そうした弘法さんと天神さんの屋台についての一言。
さすがに屋台・露店のすべてをチェックした経験もありませんし、月々の比較もおこなっていないので、たまたま目についた範囲での限られた印象なのですが、レトロ系のグッズを扱う古物業者には、他ではあまり見ない奇矯なアイテムを並べているケースがあるように見受けます。
また聞き及ぶ範囲での情報ですが、天神さんの方には和服の古着や時代裂(再利用を目的に古い和服を解いたもの)が多く出る傾向があるそうです。その方面で見る目を持ち合わせているのなら、安くていいモノが手に入れられる機会にもなるようです。この辺りはアンティークを語るには鑑識眼が必要という一般論に収束するお話です。
さて屋台・露店についてあれこれ述べてきましたが、ここまでは原則、出店される日の限られた屋台です。それに対して、異質なのが常時出店されている屋台です。どういう背景でそういう営業形態が可能になっているのかは分かりませんが、かなり特殊なタイプと思われます。それが八坂神社西楼門から本殿に向かう参道に並ぶ数軒の業者です。魅力的なものを扱っているわけでもないし、もしかするとアンタッチャブルなところなのかも知れませんので、ここでは詳しく触れるのは控えておきます。