京都の紅葉、最近のトレンドはライトアップイベントです。ひと昔前は、ライトアップというと清水寺や高台寺に限られていましたが、近年はたくさんの場所がライトアップイベントを行っています。陽光が鮮やかに映える昼間の朱色も捨てがたいのですが、夜の闇に浮かぶ赤銅色の木々も妖しい美しさを漂わせています。
桜が咲き競ったり、紅葉が色づいたりの季節には、たくさんの神社仏閣でライトアップが行われています。
思えば冬のイルミネーションや花灯路(東山が3月前半、嵐山が12月前半)、あるいは京の七夕(8月前半)、七夕ライトアップ(貴船神社)、千灯供養(あだし野念仏寺)、観月祭(下鴨神社・大覚寺ほか)などなど、一つひとつ探し出してカウントしていくと、「なんだ、ライトアップや夜間拝観は一年中、どこかでやっているじゃないか」なんて声も聞こえてきます。
しかし、斜に構えるのではなく、秋のライトアップは紅葉の美しさを引き立てる演出なのだと考えてみましょう。そうしたライトアップイベントをエリア別におさらいしてみます(2017年のデータに基づく「おさらい」ですので、2018年の実施はご確認ください)。
まずは東山界隈。人気の中心にあるのは永観堂と清水寺です。
京都の紅葉名所としてとりわけ有名な永観堂のライトアップは、持宝展と同時開催となる関係から拝観料が少し高めに設定されます。期間限定で公開される持宝(展観物は年によって異なります)にも興味があるのなら問題はありませんが、そうでないと割高感を抱くかも知れません。しかし永観堂の紅葉は、通常拝観より高めの設定になるだけの価値はあります。
清水寺は、本堂周辺に加えて塔頭の成就院が特別公開に加わります。お馴染みの懸崖造り舞台をはじめ、三重塔や子安塔などの巨大建造物を照らすスケールの大きさが本堂ライトアップの魅力(現在は本堂の檜皮屋根の葺き替え工事の途中)だとすれば、成就院の方は「月の庭」と称される名庭の美しさが魅力となっています。
東山界隈では、他に高台寺、同塔頭の円徳院、青蓮院および飛地境内の将軍塚青龍殿、天授庵(南禅寺塔頭)、知恩院、無鄰菴、一念坂・二寧坂、雲龍院[泉涌寺塔頭]、天得院[東福寺塔頭]などがあります。
嵐山に目を向けると、通常は非公開ながら春秋に限定公開される宝厳院(天龍寺塔頭)が目を惹きます。ここは「獅子吼の庭」と呼ばれる苔庭が見どころの中心で、ライトアップされた時の美しさが評判になっています。
紅葉シーズンが終わった頃から始まる嵐山花灯路との兼ね合いもあるのか、11月の紅葉シーズンにライトアップ行っているところは少なく、他は大覚寺と鹿王院ぐらいでしょうか。
大原および洛北方面ではどうでしょう。大原といえば三千院が有名スポットですが、ライトアップに限定すれば宝泉院と勝林院です。
歴史的には勝林院の僧坊が宝泉院という関係なので、ライトアップの時は宝泉院・勝林院の両寺院が同時に拝観できるようになっています(日中はそれぞれ別個に拝観料が必要)。
他に、このところ人気が高まっているところでいえば、貴船神社(貴船もみじ灯籠の一環)や曼殊院、あるいは瑠璃光院のライトアップがあります。
秋のライトアップというと紅葉の美しさが前提になるので、おのずと洛中エリアは少なめになるのですが、例外的な存在となっているのが北野天満宮、その境内西側に設けられたもみじ苑です。
もみじ苑は、青紅葉の初夏と紅葉の秋の2シーズンで一般公開され、秋にはライトアップも行われます。
他には、京都駅近くの梅小路公園のライトアップは知る人ぞ知るクラスの場所ですし、法華宗の三本山(妙顕寺・妙覺寺・本法寺)が合同で行った2017年のライトアップは、事前の告知が少なかったこともあって穴場ハンターたちの間で話題になりました。
有名無名を問わず、ライトアップイベントが行われたところをエリアを軸にご紹介してきましたが、最後にエリア的なまとめが難しいところを並べるなら、世界遺産に名前を連ねている醍醐寺と東寺、山科の隨心院、高雄の神護寺参道などの名前を挙げることができます。
変わり種では、嵯峨野トロッコ列車や叡山電車が路線の一部でライトアップを行うイベントでしょう。
なお有名観光地なのでライトアップ勢に加わっても不思議でないのに、その動きがないところといえば、金閣寺と銀閣寺ではないでしょうか。金閣寺は過去にはタイアップ形式でのライトアップが行われたことがありましたが、恒例行事にはなっていません。
あと、伏見稲荷大社はどうでしょうか。最近では、国内での評判以上に、海外での人気が高いスポットとなっていますが、ここもライトアップイベントは行っていない有名どころです。ただし、広い境内では終夜、街灯が明かりを放っているので、深夜の散策ができないわけではありません。