タクシーは高い、という固定観念を外してみましょう。単純に計算するだけでバス代より安くなるケースもありますし、またサービスに見合う料金なら、支払いを渋る理由にはなりません。話上手で穴場情報にも詳しい、そんな運転手と出会えた時にはむしろ安くさえ思えてしまうはずです。
皆さんは、京都市のタクシー料金(普通車)がいくらなのかご存じでしょうか。2018年の4月に改定された料金体系では1.2kmまでの初乗り運賃が460円で252mごとに80円加算となっています。事業者によってはB運賃というシステムが適用され、初乗り440円に261mごとに80円加算となっているところもあります。後者はエで始まる某社のことですが、詳しく言うのは控えておきます。というのは、問題はタクシー会社間の比較ではなく、京都観光でタクシーを使うことの是非をめぐっての話になるからです。また、京都府北部地区(宮津や舞鶴等)は別の料金体系となります。
タクシーを使っての観光地巡りというと、正直なところ、割高感が付いてきます。だからおのずと市バスや電車、地下鉄の組み合わせ、もしくはマイカー利用の方に流れてしまうのですが、タクシーの良さを認め、料金面での情報を正確に知っておけば、適切な使い方もできるのではないでしょうか。
たとえば、京都御苑から銀閣寺へ移動するケースを考えてみます。グループでの京都観光を行っており、この時の顔ぶれは5人ということにしておきましょう。京都駅から地下鉄を利用して京都御所の見学と御苑の散策を終え、北西角の寺町今出川のあたりでタクシーを拾って銀閣寺へ向かうとします。タクシーという選択肢がない場合は、市バスに乗るところですが、料金面で比べるとどうなるでしょうか。
5人というのは微妙な人数ですが、実は4月の改定によって小型車(4人乗り)と中型車(4~5人乗り)が普通車というカテゴリーに統合され、共通の運賃体系となっています。それが上記のもので、それに従って計算すると以下の通り。寺町今出川→銀閣寺門前(距離約2.8km):初乗り1.2kmを差し引いて1.6kmが加算対象距離となり、これを252mで割れば加算回数が7回、すなわち初乗り460円+80×7(560円)の、しめて1010円。
これと市バスに5人で乗る運賃230円×5を比べるとタクシーの方がお得となっていることがわかります。これはもちろん特殊なケースです。しかし、グループ行動での短距離移動ならタクシーの方が安上がりになることもあるということの実例です。
5人でなく、仮に3人の場合でも、市バスでの立ちっぱなし&すし詰め状態から開放されることを思えば、少々の割り増し感は許容範囲になるのではないでしょうか。市バスの側にも、一日券を購入して何度も乗降を繰り返すなどのことをすれば、格段に安くなるのは事実です。しかし、タクシーが一方的に高額であると決めつけるのではなく、使い方によっては安くなることもあると捉えておいてもいいでしょう。
またタクシーのメリットとして挙げられるのが、運転手との出会いです。いい運転手にあたるかどうかは、ほとんど運任せのようになってしまいますが、おしゃべり上手で愛想のいい運転手に出くわすと旅の楽しみが予定外の増え方をするというものです。
もちろん、プラスがあればマイナスもあります。土地鑑がなく、乱暴とまでいかなくてもどこかぶっきらぼうな運転手だったら、イヤな思いが募るかも知れません。
ただし、運転手の方も、繰り返しの指名を期待しているから車内にネームカードを備えているのですし、それを使ってもらえるよう接客トレーニングを重ねている人も多くなっています。ひと昔のイメージで、ただ車を運転するだけの仕事という認識は薄くなってきています。ご当地検定の火付け役として、いっとき話題となった京都検定ですが、タクシー業者の受験もかなり多かったように聞きます。その頃から、サービスとしてのタクシー業という意識が広まっていたということなのでしょう。
もう一つ、京都のタクシーをめぐる話題で、よく語られるのがヤサカグループの四つ葉タクシーでしょう。タクシーの天井についている社名表示灯は、通称「あんどん」と呼ばれるのですが、ヤサカグループに属する彌榮自動車等の車は三つ葉のクローバーを掲げるようにしています。
ところが、ごく少数ながら、あんどんを四つ葉にしている車が走っているそうです。ネット界隈を中心に目撃情報が飛び交い、有名な観光スポットを中心に流しているとも語られているのですが、乗車できればもちろん、目撃するだけでもラッキーになるのだとか。話上手な運転手が選べないのと同じように、この四つ葉タクシーも配車予約等の形での指名はできないということなので、祇園や木屋町界隈でタクシーを停める機会がある時は、頭の片隅に宝くじに当選するぐらいの期待を入れておくのもいいのではないでしょうか。