中国の建築や文化が継承される「黄檗宗大本山 萬福寺」

承応3年(1654)、中国・明の高僧であった隠元(いんげん)禅師が渡来し、徳川家綱より宇治に寺地を与えられて開いたのが始まりと伝わる、禅宗黄檗(おうばく)宗の大本山。隠元亡き後、第14代の竜統が日本人で初めて住持となるまで13代も明の僧が続いたことから、建築や儀式作法から日常語、料理など全般に中国的な禅宗様式が色濃く残っています。開創当時は臨済宗黄檗派でしたが、日本の臨済宗とは異なる明の様式を継承していたことから、明治9年(1876)に黄檗宗へ改宗となりました。


延宝6年(1678)に建立された三門は正面の門が三間三戸で、三間すべてが通路になっています。柱を支える丸みを帯びた礎石や柱の扁額、屋根の上の宝珠など、エキゾチックな造りが目を引きます。 総門をくぐり、放生池と三門を超えると、広大な境内に布袋様が祀られた天王殿と、本堂にあたる大雄宝殿を結ぶ縦の参道を軸として左右対称に伽藍が配置されています。布袋様は金色で弥勒菩薩の化身といわれ、大雄宝殿には釈迦如来坐像と十八羅漢像が安置されています。 また、境内全体が巨大な龍として考えられ、腹に見立てたアーチ状蛇腹天井や鱗を表した式瓦など、明の後期の様式が随所に見られます。

中国風の調度や建築、仏像にも注目してみましょう


巨大な木製の魚「開ぱん」は、全国の寺院で使用されている木魚の原型とされ、「魚ほう」や「飯ぽう」とも呼ばれています。叩いて法要や食事の時間を知らせるもので、萬福寺では食堂である斎堂前に吊り下げられ、現役で活躍しているとか。

万福寺独自のお経や食事文化も体験してみたいですね


お経の一種である「梵唄(ぼんばい)」は、4拍子を基本に節のついたお経と太鼓などの楽器を合わせる独自のもの。唐韻と呼ばれる中国語で唱えられるのも特徴です。 また、隠元が明より持ち込んだ普茶料理は中国式の精進料理で、予約をすればお寺の中でいただくことができます。

中国式の精進料理ですが、大皿から取り分けていただくのが日本の精進料理との大きな違い。野菜煮合や胡麻豆腐をはじめ、豆腐とゴボウをウナギに見立てた「精進うなぎ」など、動物性食材を模して作られたおかずもユニークです。精進料理を手軽に楽しめるお弁当も用意されているそうですよ。

日本のお寺との違いを比べながら参拝するのもよいですね

境内で中国の建築美や文化に触れ、中国風の精進料理を味わえる「黄檗宗大本山 萬福寺」。独特の伽藍配置はもちろん、菱形の敷石が並べられた参道や欄干の文様が特徴的な法堂、中国風の椅子が並ぶ唐風の回廊、中国で魔除けや聖域を表す桃の意匠がある桃戸など随所に明の空気を感じられ、異国情緒を堪能できそうです。

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黄檗宗大本山 萬福寺(おうばくしゅうだいほんざん まんぷくじ)
●京都府宇治市五ヶ所三番割34 ●京阪黄檗駅から徒歩5分