叡電の「えぇきっぷ」は叡山電鉄全線が対象のフリーパス。叡電を交通手段としてではなく、乗車自体を目的に楽しむ場合は必須のツールとなってきます。街並みとホームの調和を楽しんだり、駅舎自体が持つ魅力を味わったり、それに加えてお得なオプションもついていますので、利用価値が高い乗車券です。
叡山電鉄は、左京区の観光スポットにアクセス便利なローカル鉄道です。近年は単なる交通手段としての利用に留まらず、叡電に乗ること自体を楽しみにする動きも出てきています。展望列車「きらら」や観光列車「ひえい」の運行によるところも少なくありませんが、路線自体が持っている魅力も大きいように思われます。
そうした叡電および叡電沿線を存分に楽しむには、全線対象の1日乗車券「えぇきっぷ」(販売価格1000円)が便利です。今回は、この「えぇきっぷ」を使って乗降を繰り返す場合のお奨めを紹介します。
まず駅舎周辺の雰囲気がいいという意味で、茶山駅と一乗寺駅。正確には駅舎ではなくて、線路脇に屋根付きホームがあるだけの構造なのですが、ホームと線路がノスタルジックな街並みの中で風景化したようなローカル線らしい味わいが楽しめます。
一乗寺や茶山の界隈は昭和の頃には学生下宿が多く、学生街の雰囲気を持った街でした。当時の空気とは変わってきていますが、漠然とした名残は現在でも感じられますし、そんな空気と混じり合う叡電ホームなので味わいも出てくるのでしょう。
木野駅や三宅八幡駅もローカルなたたずまいですが、新興住宅街っぽい開発が周辺で進んでいるため、風景に同化したというのとは少し違うかも知れません。
これらの駅では、車両の中からだけでなく、一度、駅の外に出るなどして周りからどのように見えるのかということも楽しんでみてください。
ホームそれ自体の魅力を言うのであれば、木立に隠れるように設置されていて森の駅という表現がひったりの貴船口駅がイチオシです。しかし、ダークホース的な推しを入れるのは二ノ瀬駅です。
出町柳方面(上り)のホームにあるログハウス調の待合室が独特の趣きを出しているからです。二ノ瀬駅は、街なかどころか、山裾にぽつんと置かれたといった風情の駅です。そこにログハウスですので、絵になる風景と言っていいでしょう。
また二ノ瀬駅は、近くのバス通り(旧府道38号線)まで出ると、山裾を走る線路を遠望することができます。これもまたいい眺めですので、一度お試しください。
さて、駅舎(ホーム)の話題になると特筆せねばならないのは、やはり鞍馬駅の存在です。線路にプラットホームが付くだけの簡単が設備がほとんんどの叡電各駅にあって、始発の出町柳駅や叡山本線終点の八瀬比叡山口駅とともに、立派な駅舎を備えているのが鞍馬線終点の鞍馬駅です。入母屋式で二層構造の屋根を持った古民家風たたずまいという外観なので、鞍馬の雰囲気とみごとに調和しているのです。
加えて駅舎内のディスプレイ。壁に吊されているのは10月の火祭りに使われる松明(相当な大きさですが、それでも子供用なのだとか)であり、反対側の壁には源義経をモチーフとした錦絵がずらり。これらは幕末から明治期にかけて活躍した絵師月岡芳年の作品で、牛若丸伝説に因むディスプレイです。
鞍馬を舞台とした牛若丸伝説ですので、天狗が描かれた絵も多く、駅舎を出たところに設置されている天狗モニュメントと並んで、鞍馬の鞍馬らしさを表現するアイテムです。
ところで、叡電というとアニメ作品とのコラボレーションを盛んに行っていることでも有名なのですが、その方面からチェックを入れるとすれば、コラボ作品のポスター連続貼り、これも見逃せません。
連続貼りというのは、同じポスターもしくはシリーズもののポスターを4枚5枚と並べて張りだすことです。通常であれば有料広告や啓発キャンペーン等で使用される掲出枠にアニメキャラクターがずらりと並ぶことになるので、アニメファンの目線でみれば壮観と映るのではないでしょうか。
出町柳駅など市街域近くの駅では少なくても、修学院駅や八瀬比叡山口駅などでは、それなりの確率で連続貼りに遭遇できます。
ここまで1日乗車券「えぇきっぷ」を使って乗り降りを繰り返す時の楽しみ方を紹介してきましたが、この切符にはオプションサービスも付いています。鞍馬寺や曼殊院のような、沿線の神社仏閣を拝観する折に提示すれば、拝観料が割り引いてもらえるとか、お土産をもらえるとかです。
それだけでもお得感はありますが、それだけでなく割引サービスを適用する食事処や喫茶店がかなりの数に上るのは大きな魅力です。修学院の魁力屋(ラーメン)のチャーハン1人前無料のような太っ腹なサービスも含まれますので、利用価値の高い切符です。