歌は世につれ世は歌につれではありませんが、四条通も時代の変化に歩調を合わせて変わりつつあります。格式の高さを誇った花街の祇園南側も例外ではありません。変わらないものを愛でるのも趣きでしょうが、変わりゆくものを受け入れ、時代の趨勢を感じるというのも、これまた趣きといえるのではないでしょうか。
四条通は京都の代表的な繁華街です。観光で京都を訪れた人の多くは四条通界隈でのお買い物も目的の一つに入っているのではないでしょうか。ただ、より厳密にいうと、四条通に面しているのは、大丸や高島屋などの百貨店が多く、小さな間口の個性的なお店がたくさんあるわけではありません。小さなお店が目的なら、河原町通もしくは新京極や寺町の方を散策するのがベターです。
それはさておき、四条通を軸に紅葉シーズンの観光散策をご案内しましょう。ただし、ご案内と言っても、繁華街の大通りですから紅葉スポットがあるわけでもありません。また四条通というと東は八坂神社から西は松尾大社まで、距離にして8km以上のエリアが含まれますので、対象を絞る必要が出てきます。
というわけで、より観光客目線にしたがって四条通でも祇園界隈と鴨川界隈、そして烏丸界隈に至る四条通をざっと眺めていきます。
まずは祇園界隈から。四条通が鴨川を越えるところに架かるのが四条大橋で、橋に立って東を向くと、正面に見えるのが八坂神社で、右手に見えるのが歌舞伎発祥の地、南座です。この南座のある一帯から八坂神社の石段下までが「祇園」の通称で呼ばれています。また八坂神社に向かって右左をそれぞれ祇園北側、祇園南側と呼んでいます。
一般的に南側には御茶屋が多いとされてきましたが、種々の事情により、近年ではそうした傾向も揺らいでいるようです。確かに御茶屋を代表する一力亭が控えるのが四条花見小路の角で、紛れもなく祇園南側のシンボル的存在となっています。しかし、かつて御茶屋だった場所にもリーズナブルな価格で料理を提供する飲食店がテナントで入るなど、時代の要請によって様変わりする部分も増えています。
こうした祇園界隈で、一軒選んでお店を紹介するとすれば、かづら清老舗の祇園本店(祇園北側祇園石段下西入)を挙げておこうと思います。櫛や簪などの女性のための和装装身具を扱う老舗で、人気のラインナップの一つに椿油があります。
祇園の舞妓芸妓たちの美を支えてきたお店ということで、観光客の女性たちからの支持も高いお店です。ちなみに男性向けに一軒というのなら花見小路を南に下った先、花街のPR施設ギオンコーナーの隣に設置されたJRA場外馬券売場ウィンズを挙げておきましょうか、とこれは冗談。
さて、お次は四条大橋を中心とする鴨川界隈です。祇園南側がそうであるように、お高いとかリーズナブルとかの印象が実際とは対応しなくなっている今日この頃ですが、祇園界隈に比べると印象のレベルで身近に感じられるエリアが四条大橋より西側の界隈です。
もちろん四条大橋の周辺には南座を筆頭に、老舗洋食レストランの菊水や、これまた老舗の北京料理店東華菜館があるので、そこそこの格式はあるわけですが、東華菜館から西石垣通を挟んでドトールコーヒー、すき家、マクドナルドと続く並びを見ると一力亭を中心とした祇園界隈にはない親近感が漂うのは事実です。
こうした界隈のカラーもっとも特徴づけるのが四条大橋北西角一筋目の小路、先斗町です。祇園や宮川町と並ぶ古くからの花街ですが、祇園に比べるといくぶん庶民向けの印象が持たれていた場所です。現在では祇園南側でさえ伝統的な印象とは合致しない店舗構成になっているわけですが、昭和時代後半の先斗町には、大学生でも出入りできる酒場(いわゆる飲み屋)がすでに登場しており、旦那衆御用達で敷居の高さを保っていた祇園南側とは別の空気を漂わせていました。
そして先斗町のさらに一筋西側、高瀬川に面した通りが学生たちにとっての盛り場と認知されていた木屋町通です。もっとも近年は大学生とアルコールの親和性が昭和時代に比べて格段に低くなっているらしいので、かつての紅灯の巷も雰囲気を変えてきているようです。
再び視点を表通りの四条通に戻しましょう。四条通を構成する店のラインナップは時代の鏡のようなところがあります。十数年昔の話を引き出すのなら、四条通の雰囲気が変わったと嘆く声がしきりに聞こえていました。通りにやたらパチンコ店が目立つようになった頃の話です。近年は逆にその手の遊興場は相次いで退場となり、新規出店で話題をさらったのがアップルストアでした(2018年8月)。
銀行や証券会社などの金融関係のビルと百貨店が多いのは変わらない趨勢ですが、それらの隙間を埋めるのが大型書店なのか、パチンコ屋なのか、ブティックなのか、それともIT関連ショップなのか、そうしたところに時代の姿が浮き彫りとなっていたのでした。
八坂神社
地元の人からは「祇園さん」の愛称で親しまれる八坂神社は、紅葉スポットとしてはあまり有名ではないそうです。目立ったところには紅葉が見られないからです。それでも穴場スポットとしておすすめしたいのは、境内の裏手にある「紅葉のトンネル」です。近くに訪れた際はぜひ一度足を運んでみてください。
また、円山公園もすぐ近くにあるので合わせて訪れてみるのも良いですよ。
混雑状況ですが、清水寺や嵐山などといった有名観光スポットと比べるといくらか軽い方かと思います。それでも混雑は避けて通れない道なので、少しでもゆっくりと紅葉鑑賞をしたいという人は早朝や夕方~の時間帯がおすすめです。
ちなみに、紅葉シーズンに各地で行われるライトアップですが、八坂神社では行われていないようです。
住所:京都府京都市東山区祇園町北側625
電話番号:075-561-6155
紅葉の見ごろ:11月中旬~12月上旬
拝観時間:散策自由
料金:無料
駐車場:あり(円山公園駐車場に134台分の有料駐車場があります。30分毎に250円です。)