最近は人混みの煩わしさを嫌がる方も増えているとのこと。そうすると迎える側も混雑を起こさないよう、策を講じ始めます。いわゆる限定拝観(入場)の手法あれこれです。機械的に人数を絞るもの、料金設定の工夫で混雑が起きないようにするパターン、あるいは申し込み段階での会員制などがそれ。
観光シーズン真っ盛りの京都、有名観光地における人混みや雑踏に嫌気が生じたのなら入場者を制限する限定公開のスポットが気になってきます。
たとえば限定公開の猛者として有名なのが左京区二ノ瀬の白龍園。
年間を通して公開する時季は春と秋の各3が月ずつ、そして1日のうち10:00から12:30が先着100名を対象とした公開時間でしたが、より多くの人々に開放する趣旨から通常の特別拝観は昨年より人数制限は無くなりましたが、事前予約の拝観は12:30から14:00が事前予約の50名限定の公開時間とするなど限定条件を厳しく掛けていることで話題となっています。
この白龍園のように時季や時間を絞るのも限定の手法ですが、観覧料金(入場料)を一般的なケースに比べて高額に設定する方法もあります。
普段は非公開の寺社が期間限定で観光客を受け入れる企画を行う場合、たとえば公益財団法人の京都古文化保存協会が催す「非公開文化財特別公開事業」であれば1箇所につき800円となっています。仮にこれをスタンダードと考えるのなら拝観料・入場料を1000円ないしは1500円という設定は、ある意味での入場制限が掛けられていると考えることもできます。内容や規模によりけりですし、それ以前に料金設定は所有者の一存によるのは当然ですが、世の中には相場というものがあって判断するのは拝観料・入場料を支払う側の権利です。
内容に対して観覧料金が高額と思うのであれば、希望リストから外れることになるわけですから、結果的には入場制限と同じことになってきます。例を挙げるとすれば、島原の角屋があります。
角屋は、島原が華やかなりし頃の揚屋のたたずまいを現代に伝える建築物で、遊郭文化を知る上でも必見のスポットです。建物内には幕末に数々の狼藉を重ねた新撰組の連中が残したという刀傷もあります。そうしたところも含めて見どころは十分ですが、入館料は1000円、さらに2階の特別仕様の部屋は別途800円という設定となっています。遊郭文化の意義や実相を知る上では2階の「青貝の間」は是非とも見ておきたいのですが、合計で1800円になる料金設定をどう判断するかが思案どころとなってきます。
一般入館の1000円の中には重要文化財建造物への入場に加えて併設されている所蔵美術品の展観をおこなう「角屋もてなしの文化美術館」への入場料も含まれていますので、一概に高額とは言えない部分もあります。しかし「非公開文化財特別公開事業」を相場と考えるのであれば、それより高額なのは事実なので、それをどう判断するかといったところでしょう。
あるいは八瀬の人気スポット、瑠璃光院も興味深い事例となります。
瑠璃光院では磨き込まれたテーブルに映る鏡紅葉がSNS等で話題になってからは一般拝観を2000円としています。これなど料金による入場制限の分かりやすい事例と考えてよさそうです。施設として適正人数の受け入れに調整をしていると言ったところではないでしょうか。2020年は10月1日(木)~12月20日(日)まで。ネットによる事前予約制です。
また無条件の一般公開に対して、拝観や入場を希望する際に申し込みや販売の窓口を限定するという方法もあります。会員制による特別公開などがその方法です。
たとえばJR東海「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カードの会員特典として案内されているイベントは、その典型といっていいでしょう。2020年秋のイベントもすでにホームページで紹介されており、「東福寺の早朝先行特別拝観」や「建仁寺の時間外貸切特別拝観」などがラインナップに挙がっています。それぞれに魅力的な企画ですが、オリジナルイベントなので、非会員は蚊帳の外に置かれています。
このJR東海「そうだ 京都、行こう。」エクスプレス・カードの会員特典イベントでは、過去には二尊院の紅葉特別ライトアップなども実施されていました(2017年)。二尊院といえば「紅葉の馬場」で有名な嵯峨野の紅葉名所です。装置の廉価化やノウハウの普及によってライトアップに掛かる費用も軽減されてきているのでしょう、十数年前に高台寺や清水寺が先駆けとなっていた頃に比べて多くの寺社でライトアップが実施されている今日、紅葉名所でありながら、その手のイベントを行わないスポットの1つが二尊院でした。
その二尊院でのライトアップだったので、京都観光のツボを的確に抑えた企画だったと言えます。こうした事例を参考にするなら、年会費との天秤で入会を検討する価値は十分にある言えそうです。