月輪山の麓に静かにたたずむ 歴史深い皇室の菩提寺「泉涌寺」

東山三十六峯の一嶺、月輪山の麓にたたずむ泉涌寺。皇室の菩提所として、また諸宗兼学の道場として、壮麗な堂宇が甍を連ね、幽閑脱俗の仙境、清浄無垢の法城となっている荘厳な寺院です。皇室からの信仰が篤く、別名「御寺」とも呼ばれる真言宗の古刹「泉涌寺」。壮麗な堂宇をはじめ、長きにわたり秘仏とされていた極彩色の楊貴妃観音像は、必ず拝んでおきたい美しい観音様です。美人祈願や良縁祈願に、多くの女性が訪れています。

天長年間(824~834)に弘法大師が結んだ草庵・法輪寺が起源です。一時荒廃しましたが、建保6年(1218)に月輪大師・俊芿が再興。伽藍完成の折に寺域の一角から清泉が涌き出たことから、以後泉涌寺と呼ばれるようになりました。仁治3年(1242)に崩御された四条天皇の葬儀を引き受けて以来、皇室の菩提寺となり、皇家をはじめ公家・武家から篤い信仰を集めてきました。天皇の御陵と御尊牌を祀ることから、「御寺」とも呼ばれています。境内に立ち並ぶ堂宇伽藍は、応仁の乱や明治の大火を経てほとんどが一度焼失、のち移築・再建されたものですが、宋の影響が色濃い仏殿や、京都御所の内裏門を移築した大門などが、国の重要文化財に指定されています。

重要文化財の楊貴妃観音像を拝んであなたも美人に!?

月輪大師の弟子・湛海律師が、寛喜2年(1230)に宋から持ち帰った仏像。その優美な像形から、中国の玄宗皇帝が亡き妻・楊貴妃の冥福を祈って造ったとの伝承を生み、楊貴妃観音像と呼ばれるようになりました。1955年までは、100年に一度しか公開されない秘仏でしたが、現在は一般に公開されています。高さ115cm、唐草文様の一種である宝相華の透かし彫りが施された宝冠は、緻密な細工と鮮やかな彩りが特徴。口元のひげのような文様は、慈悲を説く口の動きを表しています。その美しさにあやかって、多くの女性が美人祈願や良縁祈願に訪れています。 楊貴妃像は聖観音像として、大門のすぐそばに立つ楊貴妃観音堂に安置されています。

泉涌寺再興の祖であり開山の「月輪大師・俊芿」とは?

泉涌寺再興の祖であり開山の「月輪大師・俊芿(がちりんだいし・しゅんじょう)」は、若くして仏門に入り、求法のため中国・宋に渡りました。12年の修学を経て帰国したのちに泉涌寺の地を寄進され、宋の式法を取り入れた伽藍を造営します。この地にて天台・真言・禅・浄土の兼学道場を開き、人々から律宗・北京律の祖として仰がれ、後鳥羽上皇や北条政子の授戒を行った人物としても知られています。月輪大師の像は、仏殿で拝むことができます。

参道の先に見えてくる、本尊・三尊仏を祀る仏殿

大門から続く参道は、大規模な寺院では珍しい「下り参道」です。盆地に建つ地形の構造上と、修行の一貫ともいわれます。山門から仏殿を見下ろすことになる緩やかな下り坂の参道の先にあるのが、本尊・三尊仏を祀る仏殿です。応仁の乱で一度焼失していますが、徳川4代将軍・家綱によって寛文8年(1668)に再建されました。宋の影響を受けた建築様式が見られ、国の重要文化財に指定されています。

京都御所内にあった御里御殿を移築した典雅な御座所

明治天皇の命により、明治17年(1884)に京都御所内にあった御里御殿を移築した御座所。女官の間、勅使の間など8室に分かれており、南東に位置する玉座の間は、現在も皇族方の参拝時に休憩室として使用されています。 御座所前にある御座所庭園。秋の特別公開時には、見事に色づいた紅葉が見られます。 京都では紅葉時期の初め頃に早めに色づくことで有名です。また初夏の季節に訪れると緑豊かで清々しい空気が漂う「青もみじ」も鑑賞できます。 南東の玉座の間。花鳥が舞うきらびやかな障壁画は、土佐派の宮廷絵師の筆によるもの。

寺名の起源となった泉が今も湧き出る泉涌水屋形

仏殿南側には、寺名の起源となった泉が今なお湧き出ています。屋形は仏殿と同じく寛文期の建物で、京都府の指定文化財となっています。

国の重要文化財に指定されている大門が寺の入口

境内の最も高い位置にある寺の入り口。京都御所の慶長内裏の四脚門を移築したもので、国の重要文化財に指定されています。 [hr][/hr]

まとめ 泉涌寺(せんにゅうじ) TEL.075-561-1551 ●京都市東山区泉涌寺山内町27 ●市バス停泉涌寺道から徒歩8分 ●拝観時間 9時~16時30分(12~2月は~16時) ●無休(心照殿は毎月第4月曜休館) ●拝観料500円(御殿・御座所庭園の特別拝観は別途300円) ●P30台 ●皇室の方々のご参拝や行事などが入る場合は通常のすべての参拝を予告なしに中止させて頂きます。



※現在、新型コロナウイルス感染防止の観点から2021年の2月末日まで、御座所の拝観は中止されています。(国や自治体からの要請等により延長や短縮などの措置が取られる場合があります。) ※今年(2021年)は新型コロナ感染症の影響から感染防止等の観点により 各寺社や観光スポットの営業(拝観)時間や催しの変更や中止などの可能性があります。 直前の変更・中止などもありますので詳しくはホームページ等でご確認をお願い致します。