770年(宝亀元年)、奈良唐招提寺の開祖鑑真和上の高弟鑑禎(がんちょう)上人が毘沙門天を奉安したことがお寺のはじまり。その後、藤原伊勢人によって796年(延暦15年)に伽藍が造営され、北方の王城鎮護の道場となりました。650万年前、金星から神が降り立ったという伝説が残っており、神秘的な宇宙の力を宿す、京都屈指のパワースポットとして有名です。また、霊宝殿(博物館)に安置された国宝毘沙門天三尊像をはじめとして、与謝野晶子の遺品など多くの文化財を所有しており、『源氏物語』の若紫巻の舞台や、牛若丸(後の源義経)が天狗と修行をした地としても広く知られています。本殿前からは比叡の山並みが一望でき、春には桜、秋には紅葉を楽しむために一年に二度訪れる人も多いようです。石段の上に構える楼門は、俗界と浄域を分ける結界の役割を果たしています。
本殿金堂内には毘沙門天像や千手観世音菩薩像、護法魔王尊像が安置されています。ご本尊は秘仏で、60年に一度、丙寅の年に開扉。ふだんは「お前立ち」と称する代わりの像が安置されています。正面の金剛床は星曼荼羅を模しており、その中心に立つと、宇宙のエネルギーを授かることができると言われ、京都屈指のパワースポットとして人気を集めています。また、本殿前に鎮座するのは、狛犬ならぬ「阿吽の虎」。本尊毘沙門のお使いで、五十音が「あ」から始まり「ん」で終わることから、宇宙の全てを包含すると言われています。
鞍馬寺の本堂のあたりからは、遠くに比叡山も望めます。空気が澄んでいて、思わず深呼吸したくなります。
650万年前に金星から降臨したという護法魔王尊を祭る「奥の院魔王殿」。本殿から貴船神社へ抜ける山道の途中にあります。奥の院までには、「息つぎの水」や「背比べ石」など、源義経ゆかりの史跡が数多く残っています。魔王殿の手前には、奥州で非業の死を遂げた義経の御魂が祀られている「義経堂」もあります。そのあたりは、牛若丸が天狗に兵法を習った「僧正ガ谷」です。
このあたり一帯の砂岩がマグマの貫入によって硬化したため、根が地下に伸びることが出来ず、地表に木の根が露出していることから「木の根道」と呼ばれている道。牛若丸はこの「木の根道」でも兵法修行をしたと伝えられています。歩きやすい靴で訪れるのがおすすめです。
鞍馬駅を出ると目に飛び込んでくる、大きな天狗のオブジェ。
鞍馬駅からケーブルを使わず、九十九折参道を歩くと、途中にある一帯の氏神さまが「由岐神社」です。平安京のころ、平和祈願のため御所から鞍馬へ由岐明神が勧請され創建されました。豊臣秀頼が再建したといわれる中央に通路を設けた割拝殿は、桃山時代の建築で、国の重要文化財に指定されています。毎年10月に行われる「鞍馬の火祭」
でも有名です。
京都三大奇祭のひとつに数えられる「鞍馬の火祭」
。由岐明神が勧請された際、村人がかがり火を焚いて迎えた古事にちなんでいます。毎年10 月22 日(時代祭と同日)夕方6時ごろ「サイレヤ、サイリョウ」の声とともに松明が掲げられ、集落内を練り歩きます。神輿が御旅所に戻されるのは翌2 時ごろです。(2018年は台風のため中止となりました)
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まとめ
鞍馬寺(くらまでら)
TEL.075-741-2003
●京都市左京区鞍馬本町1074 ●叡山電鉄鞍馬駅から仁王門まで徒歩5分、本殿まで徒歩のみ30分、ケーブルカー利用20分 ●9時~16時30分(霊宝殿は~16時) ●無休。霊宝殿は月曜(祝日の場合は翌日、12月12日~2月末は休館) ●愛山費200円(霊宝殿は200円)●Pなし(周辺駐車場を利用)
由岐神社(ゆきじんじゃ)
TEL.075-741-1670
●京都市左京区鞍馬本町1073 ●叡山電鉄鞍馬駅から徒歩10分 ●境内自由 ●Pなし