近年、新しく紅葉スポットとしての評判があがってきた八瀬界隈。叡電も後押しする地域の魅力をご紹介

叡山本線の終点に位置する八瀬は、かつては比叡山にアクセスするための通過点でした。ところが最近は観光整備も進み、八瀬界隈自体が紅葉の名所として評判となっています。「八瀬もみじの小径」を始め、ここ2〜3年のうちで注目を集めるようになった八瀬のお奨めスポットをまとめてみました

出町柳駅を起点とする叡山本線(叡山電鉄)は、宝ヶ池駅で鞍馬線と路線を分かって、高野川に沿って比叡山の山麓方面へと伸びています。その終点に位置するのが八瀬比叡山口駅です。ひと昔前は、延暦寺に向かう叡山ケーブルとの連絡ポイントに過ぎなかった八瀬ですが、最近は八瀬界隈自体が目的地となるくらい注目度が上がってきています。その傾向はとりわけ紅葉のシーズンに著しく、洛北の紅葉スポットとしての地位も確立しつつあります

八瀬もみじの小径

叡山電鉄もそうした傾向を意識したのでしょう、2013年には八瀬比叡山口駅とケーブル八瀬駅をつなぐエリアの一画に遊歩道を整備して「八瀬もみじの小径」と名付けて一般に開放しました。もとよりイロハモミジの群生がある場所でしたが、積極的に広報されているわけでもなく、近寄る人も多くはありませんでした。そこに遊歩道を通し、案内板等も設置するなどしてて広く告知したのが2013年。また2015年からはライトアップも行われるようになり、市原の「紅葉のトンネル」とともに、紅葉シーズンにおける叡電沿線の目玉スポットにもなりました。 またぐるりと廻ってきてもせいぜい5分程度の小さなエリアですが、遊歩道の周辺には、平安遷都記念塔やラジオ塔、あるいは昭和時代の中頃まで現役で活躍していた水力発電施設の痕跡が残されていて、ちょっとした近代遺跡の集約スポットとなっています。 このうち、平安遷都記念塔は、もともとは明治28年の遷都百年記念祭の時、新たに創祀された平安神宮の北側に設置されたものでしたが、昭和になって丸太町通が拡幅されるのに伴って八瀬に移転されました。自然地形を利用する水力発電施設はともかく、平安遷都記念塔の移転先にこの地が選ばれた理由は不明ですし、ラジオ塔についても、普通であれば公園などたくさんの人が集まる場所に設けられるものなので、それがなぜこの地にあるのか、不思議といえば不思議です。 詳しい事情は明らかになっていませんが、もしかすると、平安遷都記念塔の近くにあったラジオ塔を、すでに役割を終えたものと見なして記念塔と一緒に移してきたのかも知れません。

八瀬もみじの小径の基本情報

【電話】075-801-5315(京福電鉄 管理部) 【アクセス】叡山電車八瀬比叡山口駅下車すぐ

瑠璃光院の来歴

さて、話を八瀬に戻しますが、紅葉シーズンの八瀬を一躍有名にしたのは瑠璃光院の存在です。この場所は、大正から昭和初期、京都の電気事業を担った京都電燈の創業者、田中源太郎の別荘「喜鶴亭」でした。田中の死後、所有者が転々とした後、2005年に岐阜県の寺院光明寺が取得、そうして京都本坊・瑠璃光院という名前の真言宗寺院として再出発しました。 建物は京数寄屋造りの名工、中村外二、庭は佐野藤右衛門一統が手がけ、現代風な数寄屋造りと三つの苔庭(山露路の庭、瑠璃の庭、臥龍の庭)が絶妙な調和を保って山門より奥に別世界のような空間を作り上げています。 瑠璃光院の紅葉の見どころは、山門を覆うように彩る鮮やかな紅葉です。三門は、叡山電鉄「八瀬比叡山口駅」から高野川に沿って歩き、つり橋を渡ると目に入ってきます。また、瑠璃光院の書院2階の机にリフレクションする紅葉の様子も見事なものです。リフレクションとは、反射することを意味し、鏡のように机に映りこむ鮮やかな紅葉はSNSでも話題となっています。 加えて、瑠璃光院ないにある「山露路の庭」、「瑠璃の庭」、「臥龍の庭」が紅葉に彩られた風景も、見事なものです。ぜひ、それぞれの庭をじっくりと眺めてみてください。 瑠璃光院となってほどなくして期間限定の一般公開事業に参加したところ、すぐに行列ができるぐらいの人気を博するようになりました。2013年には一度、拝観を停止していましたが、拝観料を見直したり、定員制にするなどして再度、公開に転じています。2017年には、春秋の特別公開(拝観料2000円)に加え、定員制によるライトアップ公開、18年春には青もみじシーズンのライトアップ(カード会社タイアップの利用者限定の公募)も行われました。 ちなみに、拝観料の2000円は特別公開事業に参加する他の神社仏閣の標準的な設定に比べると、高額の設定です。また定員制のライトアップも叡山ケーブルの乗車券(同時期に実施されるケーブル比叡駅からのスカイビュー対応)がセットになっているとはいえ、こちらも高額設定となっています。他の神社仏閣と横並びになる標準的な価格帯(600円〜1000円)で公開されていた時に混雑を極めた反省があるのでしょうか、高額の設定で来訪者の数を調整しようとしているようにも思われます。

2019年秋の拝観について

瑠璃光院は、毎年春と秋に行われる特別拝観の時期にしか拝観することができません。今年の秋の特別拝観の詳細は、下記の通りです。 【期間】10月1日(火)~12月10日(火)※この期間中にお休みはありません。 【拝観時間】10:00~17:00 【拝観料】一般:2,000円 ※拝観予約は受付しておりません。※団体でのチケット一括販売は行っていません。

駐車場はありますか?

なお、瑠璃光院にしても、もみじの小径にしても、知名度があがったぶん、来訪者も増えているのですが、地域全体のキャパシティが追いついているわけではありません。特に駐車場事情は厳しく、瑠璃光院、叡電、叡山ケーブル、それぞれにマイカーでの訪問は控えるようアナウンスを出しています。 インターネットによる駐車場検索を行えば瑠璃光院のすぐ近くにもコインパーキングが表示されます。しかし繁忙期の来訪者数と比べると、到底どうにかなるキャパではありませんので、ハナっからないものと考えておくのが賢明です。

瑠璃光院の基本情報

【所在地】京都府京都市左京区上高野東山55番地 【電話】075-781-4001 【アクセス】「八瀬比叡山口駅」下車 徒歩5分