観光シーズンは混雑しているところばかりと思われがちの右京区より、スッキリ快適なスポットをお届けします

京都御所

右京区は観光地ばかりだから、シーズンは混雑だらけ、なんて愚痴をよく耳にします。嵐山界隈は確かに混雑することが多いですけど、混雑と無縁なスポットがないみたいな言い方はどうでしょう。1を見て10を語るような思い込みから抜け出して、シーズンでも空いているスポットをいくつか訪ねてみましょう。

右京区観光エリア一般的な地図を広げて京都市域を眺めた時、西側すなわち左の多くを占めるのが右京区です。左側なのに右京区とはこれ如何に?・・・・・・なんて小咄にも出てきそうな話題ですが、種明かしをすれば、いたって簡単、天子様の御在所、京都御所から見て右側だから右京となるだけのことです。もともとは左京も右京も都城造営の際に、南面する玉座を基準にした言葉ですので、中国の隋唐時代、日本では藤原京や平城京の時代から存在していました。平安京でも同じ理屈は適用されたわけで、その名残が近代の行政区名に見られるまでの話です(行政区としての左京区および右京区の成立はともに昭和時代の初期)。ところで、大文字こと五山の送り火では、東側の如意ヶ岳にあるのが「大文字山」で、西側が「左大文字山」。今度は西側、すなわち向かって左側が文字通りの「左」になるわけですね。送り火はシモジモの行事だから、ということなのでしょうか。

[右京区=観光エリア?]

と冗談はさておき、なにかとややこしいところはありますが、京都市域の西から西北方面を広く占めるのが右京区です。このエリアには嵐山や三尾が含まれますので、一部では右京区全部が観光エリアであるかのような捉え方もされています。しかし、全体の広さを思えば嵐山界隈にしても三尾界隈にしても微々たるもの。観光地の相対的な占有度合いでいえば、おそらく清水寺界隈を含む東山区に軍配が上がることでしょう。それであるにも関わらず「右京区は観光エリアだから観光シーズンにはどこへ行っても混雑する」と愚痴をこぼす人がいます。これはひとえに嵐山の印象が圧倒的に大きいがための結果で、そういう幻想にとらわれている人のため、今回は右京区の観光物件・混雑しない場所編というテーマで話をしてみます。

[混雑知らずの嵐山・嵯峨野]

嵐山・嵯峨野まずは嵐山界隈から。実際の話、混雑するといっても、それは渡月橋や竹林の小径のあたりに限定されています。同じ嵐山界隈でも嵐山公園亀山地区の展望台まわりや大悲閣千光寺などはさほど混雑していませんし、嵯峨野方面に向かったとしても混雑を極める祇王寺や二尊院のすぐ近くにある滝口寺は、これまた混雑知らずです。したがって「右京区はどこ行っても」はもちろんのこと、「嵐山はいつも混雑している」という愚痴は、食わず嫌い的な思い込みとも言えるでしょう。とはいえ、千光寺や滝口寺の例で「ほら混雑していないでしょ」と鬼の首を取ったように言うのも大人げないというもの。ということで、ほんの少し工夫を凝らすことで出会える非混雑スポットを紹介してみます。

[車折神社の場合]

車折神社工夫と言ってもたいしたことではありません。混雑の象徴、渡月橋から距離を置くだけの話です。たとえば車折神社。渡月橋北詰のすぐ西側に「琴きき橋」と刻まれた石の欄干があり、その向こう側に大きく「車折神社」と看板のようなものが掲出されている場所があります。これは車折神社の頓宮(仮の宮所、本宮の対)ですが、本宮まで出向いてみれば知名度の割には混雑していないことがわかります。嵐山を舞台に行われるイベントに5月の三船祭というものがあります。11月のもみじ祭のように、大堰川に船を浮かべて王朝時代の船遊びを再現するイベントですが、これは車折神社の神事でもあります。このように、嵐山界隈と関わりの深い車折神社ですが、秋の繁忙期でも本宮はさほど混雑していないというのは、面白い現象かも知れません。嵐電の駅で数えるなら3駅、歩けば20分ほどの場所ですので渡月橋まわりがピークの混雑が薄まってくるのも当然でしょうか。それでも嵐電側の裏参道から社務所までの間では紅葉も美しく映えるので、歩くにせよ、電車に乗るにせよ、訪れる甲斐は十分にあります。

[直指庵の場合]

直指庵この車折神社のように、その場所自体が有名であっても、象徴的に混雑するスポット(この場合は渡月橋)から離れれば離れるほど、混雑は緩和される傾向にあります。紅葉の風情は極上であり、かつ旅のノートこと「想い出草」で一躍有名になった直指庵についても事情は同じです。嵯峨野の混雑スポット、竹林の小径からなら徒歩で優に30分はかかりますし、大覚寺の門前(市バス停留所の大覚寺前)からでも10分以上は要する場所ですので、知名度から思うほどには混雑していないのが実際です。もちろん、他の観光客がまったくいない閑静さを期待するのは難しいのですが、大型ツアーの団体客に遭遇でもしない限り、煩わしくなるほど状況になることはないでしょう。