紅葉観賞がお目当ての観光客で賑わう京都の秋。嵐山などの有名どころは、多くの方にとって同じ目的地になりがちにですので、無計画に訪れたりすると人混みに流されるだけで終わってしまうかも知れません。そうならないためにも、効率なコース設定を心がけるのは、京都の秋を楽しむための必要なテクニックと言えるでしょう。
そもそもコース設定とは何なのでしょう。
目的地が例えば清水寺だったとします。すると清水寺に行く方法は何通り思い浮かぶはずです。そこで、それぞれの行き方の特徴を考えて、どこをどう通って清水寺へ向かうのかを考えるのがコース設定です。
単純に混雑回避が目的の行き方もあれば、混雑は折り込み済みで行程も含めて楽しむ行き方もあります。
嵐山の場合は、目的地自体が広く、選択肢も多数です。訪れる目的地をどこにするのか、どの道を通って行くのかなどを工夫すれば、混雑回避に役立つだけでなく、嵐山そのものに対する見方も変わってきます。
最初に清水寺。境内に入ってからは固定された順路なので、仁王門に至るまでが検討対象です。
最も混雑するのは八坂神社・円山公園を出てねねの道〜二寧坂〜産寧坂〜五条坂とたどるコースです。清水界隈のシンボリックなコースなので、季節を問わず賑わいます。道幅の狭さもあって紅葉シーズンのような繁忙期は非常に混雑します。このコースを選ぶのなら、混雑上等ぐらいの割り切りも必要です。
これに比べて少しは混み方が緩和されるのが、五条坂の交差点からバスが通る道路沿いに仁王門を目指すコース、または八坂通から八坂の塔の前を通って産寧坂へ入るコースなど東大路通を起点としたコースです。
最終的に混雑区画に合流することや混雑回避と言ってもわずかばかりだ等々の理由で、強く推奨するものではありません。混雑回避が最重要の条件だとすれば、早朝の8時か9時ごろに訪れる(清水寺の拝観は6時から可能)ぐらいの対処が必要です。
一方、本堂舞台から眺める紅葉の色映えがもっとも引き立つのは、午後の陽光もしくは夕映えの頃合いなので、その時間帯の観賞は譲れないというのなら、混雑も合わせて受け入れてもらうことになります。
次に嵐山について。そもそも嵐山とはどこなのでしょう。そういう名前の山はありますが、紅葉の名勝・嵐山という場合は、山を言うわけではありません。
嵐山(山名)を眺める場所のことであり、ピンポイントで挙げるのなら渡月橋や大堰川(桂川)河川敷のことになります。観光地の嵐山という場合は、そこに嵯峨野界隈までが加わってくるのが普通です。対象が広くなるので、コース設定も複雑になります。
渡月橋が目的地の場合、最も混雑が少ないのは阪急・嵐山駅から渡月橋を目指すコースです。京都線と嵐山線の乗り換えが面倒という声も聞こえてきますが、鉄道のみで嵐山にアクセスできるのはメリットです。
京福電鉄(嵐電)を利用して京福・嵐山駅に入るコースも電車利用のみという点では同じですが、京福・嵐山駅から渡月橋の間の2〜300メートルが超混雑区画なので、混雑回避という観点からはお奨めできません。
一方、渡月橋はともかく竹林の小径を歩いてみたいと考えている場合はどうでしょう。標準的なパターンでは、京福・嵐山駅を降りて北に300メートルほど行って左折、小さな路地に沿って進めば竹林の小径、といった案内になるはずです。最短距離はその通りですが、その間の全部が混雑しやすい区画ですので、遠回り承知で丸太町通の一筋南側の路地から野宮神社〜竹林の小径を目指すとか、嵐山公園亀山地区を通り抜けて西側から竹林の道に入るとかの設定にするのがいいでしょう。
なお上記のような裏道コースは簡単なイラスト地図には描かれないことが多いので、Googleマップ等の詳しい地図を参考にしてください。
さて、清水寺、渡月橋、竹林の小径と、それぞれに至るコース設定の考え方をお話しましたが、単純化されたイラスト地図ではない詳細な地図を眺めながら、もう一度、コースを振り返ってみてください。すると最終目的地だけでなく、プラスαで足を延ばせる候補地が近くにあるのが分かるはずです。
例えば清水寺の「八坂通〜産寧坂〜清水寺」コースなら、八坂の塔やくくり猿で有名な八坂庚申堂、または清水寺を訪れた後での清閑寺などです。
清水界隈での紅葉観賞は、清水寺の錦雲渓だけが大きく取り上げられますが、庚申堂にしても清閑寺にしても、それぞれの魅力がある場所です。
また嵐山に目を向ければ、亀山展望台から眺める大堰川の景色は、嵐山(山名)と烏が岳の紅葉を渡月橋からとは違ったアングルから眺められる絶好のスポットです。
このように、詳しい地図を手がかりにコース設定が考えられるようになると、単純に混雑回避のコツが分かるだけでなく、観光地の楽しみ方そのものが膨らんできます。