ラジオ放送が日本で始まったのは、大正14年(1925)のことです。皆さんは「ラジオ塔」をご存じでしょうか?昭和初期から戦時中にかけてラジオは高級品で、一般家庭に普及していませんでした。そこで、公園などの屋外に街頭ラジオとして「公共のラジオ受信機」が設置され、近所の人が集う場とされたといわれています。大阪の天王寺公園を皮切りに、多いときで全国に460基が建てられていたとか。現在は関西を中心に受信機が取り外された塔が20基ほど残るのみで、京都府の8基が最多だそうです。
京都に残るラジオ塔は全部で8基あります
京都でラジオ塔を見ることのできるのは、円山公園、船岡山公園、小松原児童公園、紫野柳公園、橘公園、萩児童公園、八瀬もみじの小径、御射山公園。今や遺構であり史跡ですが、当時は野球中継などが流れ、ラジオ体操なども盛んだったとか。
それぞれに特徴を持つラジオ塔
観光名所として人気の円山公園のラジオ塔は、シンボルの「祇園枝垂桜」から八坂神社へ向かう途中にあります(写真は桜の季節に撮影したものです)。
こちらのラジオ塔は、昭和7年(1932)に設置、戦時中の金属回収を経て昭和57年(1982)に修復されたもの。受信機は外されているものの、夏の朝にはラジオ体操の音楽が流れてきそうな存在感です。側面には、当時のラジオの前に集まる人々の写真がはめ込まれています。
八瀬もみじの小径と御射山公園のラジオ塔は対照的?
八瀬もみじの小径内にあるラジオ塔は、比叡山につながるケーブル八瀬駅のすぐ近く、斜面の中腹にあります。
明治33年(1900)に竣工された「高野水力発電所」の跡も残る場所で、紅葉シーズン以外はひっそりとした場所ですが、ケーブルカーの歴史も見守ってきたような風格あるたたずまいです。
また、四条烏丸からも近いまちの中心部にある御射山公園のラジオ塔は、昭和初期には公園に隣接する日彰小学校(現在の高倉小学校)の校庭に設置されていたとか。比較的新しいものに見え、当時から残る塔なのかは不明ですが、噴水のような見た目で公園に溶け込んでいます。
公園の片隅に残る昭和の遺構
のほか、高台にあり見晴らしのよい船岡山公園、地元の子どもたちが集う小松原児童公園、紫野柳公園、橘公園、萩児童公園にラジオ塔が残されています。レトロ建築や歴史遺産が好きな人は、ラジオ塔にも好奇心のアンテナを張ってみてはいかがでしょうか? 今回、京都市内の8基すべてをご紹介することは叶いませんでしたが、設置されている場所の近くに立ち寄った際は感度を上げてみてくださいね。
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円山公園(まるやまこうえん)
●京都市東山区円山町 ●市バス停祇園から徒歩3分
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八瀬もみじの小径(やせもみじのこみち)
●京都市左京区上高野東山 ●叡山電車八瀬比叡山口駅から徒歩7分
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御射山公園(みさやまこうえん)
●京都市中京区東洞院通蛸薬師上ル御射山町282 ●地下鉄四条駅・阪急烏丸駅から徒歩5分
●京都市東山区円山町 ●市バス停祇園から徒歩3分