有名スポットなのに、紅葉の話題で取り上げられることが少ない場所といえば八坂神社があります。でも本当に紅葉スポットではないって言えるのでしょうか。八坂神社を紅葉という方面から解剖してみれば、見るべき場所が見えてくるだけでなく、八坂神社境内の構造も浮かび上がってきます。
京都の繁華街の代名詞でもある四条通、その東端に鎮座するのが八坂神社です。「祇園さん」の通称で親しまれるように、祇園のシンボルとなっているお社です。今回は、祇園さんこと、この八坂神社を紅葉というキーワードからアプローチしてみます。
八坂神社といえば、普通は祇園祭との関連で語られたり、京都の人気初詣スポットとして紹介されたりしますが、紅葉スポットとしての注目は少ないかも知れません。それもそのはず、八坂神社のメインの参拝路にあるわけではなく、裏手に回った時に見える程度のものなのです。しかし、それでも「紅葉のトンネル」と表現する人がいるくらいの広がりはあるので、何かのついでにでも裏手に回ってみるのもいいでしょう。もうひとつ、紅葉が美しいといわれている場所が重要文化財にも指定されている石鳥居。その横にあるイチョウの木が、紅葉シーズンを迎えるときれいな黄金色に染まります。日中には陽の光を浴びて輝き、夕暮れ時には薄暗い中で柔らかい印象へと姿を変え、見る人を魅了します。
【詳細情報】
紅葉の見ごろ:11月中旬~12月上旬
拝観時間:散策自由
料金:無料
駐車場:あり(円山公園駐車場に134台分の有料駐車場があります。30分毎に250円です。)
ところで、メインの参拝路と書きましたが、この言い回しには少しばかり語弊があります。たくさんの人が用いるルートという多数決的なニュアンスでは確かに「メイン」です。しかし、四条通を東に進んで突き当たり、石段を上った後、西楼門をくぐって境内に入るこのコースは、あくまでも脇から本殿に向かう形になっています。
神様に向かって正面からまっすぐ近づいていくのが「あるべき」参拝の作法なのだとすれば、西楼門からではなく南楼門からのコースがそれに該当します。つまり、下河原町通(東大路通とねねの道に挟まれた路地)を通って石鳥居をくぐる、そして南楼門を経て本殿の前へ出る、これが正面からの道順です。
さて、いくらか小言のようなことを書き連ねてしまったようです。しかし、このことは今回のメインテーマである「八坂神社の紅葉」とはまったくの無関係ではありません。というのは、この正面からの参拝路を意識することによって八坂神社境内の構造が分かりやすくなり、ひいては「裏手」という言い方をしてきた紅葉スポットの場所も特定しやすくなるからです。
ということで、以下、八坂神社の境内の構造についてお話を進めていきます。正面参拝路を通って本殿前に立った後、まず右手の方を見てください。時計塔や灯籠、あるいは小さな祠が並んでいるのが目に留まるはずです。
そして、その方向に進んでみると、本殿の東面に沿うような形で、同じような祠がいくつか並んでいます。この小さな祠の並びが大切で、八坂神社は本殿をぐるりと取り囲むように小さな祠が並ぶ構造となっているのです。
これら小さな祠(摂社といいます)の中には、舞妓芸妓さんの信仰も篤いという美御前社や祇園祭の粽と関係の深い蘇民将来を祀る疫神社などが含まれていますので、個別に見て回るのも面白いのではないでしょうか。
さて、問題はこれらの摂社が境内の余ったスペースに適宜置かれたのではなく、本殿を取り囲むように配置されている点です。これが偶然そうなっただけなのか、それともなにか宗教的な意味合いがあるのか、それはわかりません。しかし、意図的な配置であるかのような並びになっているのなら、それらを見て回るためには、本殿の周囲をぐるりと回る形でたどることになります。正面からの参拝路と併せるなら、あたかも副次の参拝路であるかのような雰囲気さえ漂わせています。
八坂神社の紅葉と呼ばれる「裏手」は、この副次の参拝路、ぐるり一周コースをたどった時に見えてきます。つまり、本殿の北側(南側が正面なので北側は裏手です)に回り込んだ時に摂社の刃物神社や厳島社のあたりの木立が、11月の中旬から下旬にかけての紅葉シーズンにはいい具合に色づいてくれるのです。
そして、この木々が巡回ルートに張りだしてくるようになっているのに注目して「紅葉のトンネル」と評する人もいる、ということなのです。
紅葉からはちょっと離れてしまいますが、八坂神社では「京都・東山 花灯路」や日本三大祭のひとつである「祇園祭」などが行われることでも有名です。
春に行われる「京都・東山 花灯路」では、清水寺・高台寺・ねねの道・八坂神社・青蓮院門跡に至るまでライトアップされて、京都の夜を美しく照らし出します。
「祇園祭」は夏の間の一ヶ月間という長期間に渡って行われ、様々な催し物が執り行われます。中でも見どころなのが、山鉾という大きな山車が周り歩く前祭りと後祭りです。
春や夏にはお祭りが、秋には紅葉が美しい八坂神社は、四季折々の楽しみ方ができるスポットなんですね。
ところで今回は「八坂神社の紅葉」というお題にしていますので、八坂神社の境内に立脚点を置いた視点で説明しましたが、実はこの紅葉スポットは八坂神社境内に隣接する円山公園側から眺めた方が、よりトンネルらしく見えます。
円山公園というと、八坂神社の東側と思われがちですが、北側もまた公園の園内になっています。地下に駐車場があり、その天井部分に相当するあたりで、八坂神社境内の刃物神社や厳島神社の北側ぐらいの場所です。境内と公園の境界線を境内から見るのか公園から見るのかの違いで、たいした問題ではありません。ただ、円山公園の紅葉というと、東側エリアのように、もっとスゴイ場所がたくさんあるので「八坂神社の紅葉」としておいた方が穴場っぽく聞こえるのも事実です。
そんな円山公園について少しご説明いたします。園内は約86千平方メートルもある広大な敷地面積を誇り、各所にイロハモミジ・桜などが植えられています。
見どころは、紅葉をバックに立つ坂本龍馬像や中岡慎太郎像、国の名勝にも指定されている池泉回遊式日本庭園、ひょうたん池に映り込む紅葉など、たくさんあります。
紅葉シーズンになると各地で行われ人気を集めるライトアップイベントですが、残念ながら円山公園では行われていないようです。
住所:京都府京都市東山区円山町他
電話番号:075-561-1350
時間:自由
料金:無料
清水寺 (きよみずでら)
清水寺は1994年にユネスコ世界文化遺産に指定されて以降、国内外から訪れる観光客は後を絶ちません。京都に初めて観光に行く方は、ほとんどの方が行くといっても過言ではない誰しもが1度は訪れたことのある寺院です。
清水の舞台と約1000本のヤマモミジの光景は、圧巻。
日中の景色も格別ですが、ライトアップされた幻想的な姿はどんな人も魅了します。世界の認めた歴史的建造物と周囲の豊かな自然が光に浮かび、京都にこの時期訪れるなら一度は見てほしい景色です。
【創建当時の伽藍を再現する】をテーマに平成(令和)の大改修も無事に完工し真新しい姿となりました。
清水寺の紅葉についてもっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
●2022年の秋の特別拝観について
【2022年 秋の夜間特別拝観・ライトアップ】
11月18日〜11月30日 開門 午前6:00〜閉門 午後21:30
拝観料 一般 400円 小・中学生 200円
予約不要
圓徳院 (えんとくいん)
京都・東山にある圓徳院。
京都の中では混雑が少なくて、夜の紅葉を楽しむ事が出来る穴場スポットとも言えるでしょう。
ねねの道を結び台所坂、枯山水が美しい南庭、巨大な岩のどっしりと構えた北庭がライトアップされます。
圓徳院は、高台寺の塔頭であり、秀吉の奥さん・ねね(北政所)が晩年を過ごしたお寺になります。
圓徳院の特徴としては、伏見城の化粧殿や前庭を移築してきた事もあり、雰囲気として安土桃山時代の煌びやかな装飾や雰囲気を見て取れる事でしょう。
また北庭では大きな岩が目につくと思います。それは、伏見城北政所化粧御殿の前庭をそのまま移して来たものとして、ほとんど原型になります。この様な形で今現在も残っているということは、日本文化にとってとても貴重な物であると言えます。
この庭は、賢庭が作り、小堀遠州が整えたと言われています。安土桃山時代ではよく見られた庭の形であり、とても豪華かつ華やかで美しいのが特徴です。また作庭家である北山安夫氏が作り上げた南庭は、方丈から見る事も出来ます。季節ごとに、その時に美しい木々や花々がそれぞれの庭を飾り付けます。
ここで耳寄りな情報として京都での旅の休憩には、圓徳院がおすすめです。
その理由は、抹茶を飲みながら、風情ある景色を楽しめるからです。割とどこでもあるのでは?と思う方もいますが、圓徳院は普通とは少し違う空間で抹茶を頂く事が出来るのです。
【拝観時間】午前10時~午後5時
【拝観料】大人500円、中高校生200円、小学生以下無料
※共通拝観券(高台寺、掌美術館、圓徳院)900円
【アクセス】京阪電車祇園四条駅から市バス 東山安井下車、徒歩約7分
【駐車場】拝観することで高台寺の駐車場が1時間無料
高台寺 (こうだいじ)
霊屋内部に施された蒔絵は圧巻であり、とても有名な寺院。
豊臣秀吉の正室である北政所(ねね)が建てた寺で、秀吉の菩薩を祀っています。
ここでは現代アートとのコラボレーションが実現。プロジェクションマッピングが実地され、ライトアップされた色とりどりの紅葉した景色と合わせて、神秘的な空間を感じることが出来ます。また、夜の闇の中、臥龍池が鏡のような役割をして、真っ赤な紅葉を逆さに写し出す様子は幻想的です。
近くにはねねが77年の生涯を閉じた圓徳院や円山公園などもあり、併せて楽しむことができます。
高台寺の紅葉についてもっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
●2022年の秋の特別拝観
【期間】
2022年10月21日(金)〜12月11日(日)
9:00〜17:30 (17:00受付終了)
ライトアップ 17:00~22:00(最終受付21:30)
【見ごろ】
例年通りでいけば11月中旬~11月下旬
令和3年秋の特別拝観は下記の通りでした。
いかがでしたか。さまざまな紅葉名所がひしめく京都の中で、八坂神社の紅葉はそこまでの知名度はないかもしれません。でも、年間を通して様々な見どころが満載の八坂神社は一度は訪れてみたいスポットといえますね。もちろん美しい紅葉も見ることができますし、少し物足りなかったとしても近くには名高い紅葉名所が並びます。皆様にとって素敵な旅の思い出となりますように。