電車に乗ることが楽しかった子供時代、叡山電鉄は、そんなわくわく感を思い出させてくれます

叡山電鉄

左京区の観光スポットをつなぐ叡山電鉄は、乗ること自体が楽しくなるような電車に生まれ変わりつつあります。「もみじのトンネル」のような路線の楽しみもあれば、「きらら」&「ひえい」といった特殊車両の楽しみ、そしてアニメファンにはたまらない「きらら×きららプロジェクト」。叡山電鉄の楽しみ方を総まくりでご紹介します

叡山電鉄[交通手段から乗る楽しみのある電車へ]叡山電鉄は、左京区を走る私鉄です。出町柳駅を起点に八瀬方面に向かう叡山本線および鞍馬方面に向かう鞍馬本線の2つの路線があり、出町柳駅から宝ヶ池駅までは同じ線路を共用した後、宝ヶ池駅で2つの方向に分かたれる形になっています。叡山本線は終点八瀬比叡山口駅で叡山ケーブル・ロープウェイに連絡するので、京都市内より比叡山延暦寺に参拝する主要アクセスとなっています。この他、詩仙堂や圓光寺のある一乗寺、瑠璃光院などが控える八瀬、さらには貴船神社や鞍馬寺など左京区の主要な観光地に向かう足として重宝されています。こうした交通手段としての役割に加えて、最近は叡山電鉄に乗車すること自体を楽しみにする動きも起きています。そこには、車窓より眺める沿線の美しさであったり、乗客を楽しませる車体の工夫だったりといろいろな要素が絡むのですが、それらを順に紹介していきましょう。

[もみじのトンネル]

もみじのトンネルまず車窓の楽しみとして特筆されるのは「もみじのトンネル」と呼ばれる、鞍馬本線の市原駅と二ノ瀬駅の1区間です。そこでは約250mの距離にわたって、車窓のすぐ近くまでイロハモミジなどの木の葉が迫っており、まさに木の葉で作られたトンネルを突き抜けるような景観を見せてくれます。青もみじの頃もさることながら、もみじのトンネルがもっとも魅力的になるのは、言うまでもなく紅葉シーズンです。気象条件によって前後することはありますが、基本は11月の中旬から下旬です。東山や嵐山に比べると、北に位置することもあって少し早めのシーズン到来と考えていいでしょう。十数年前なら、この路線を通勤や通学で日常的に利用する人たちが秘かな楽しみとして知っていた程度でしたが、近年では叡電本体も積極的にPRに乗り出していますので、この景観を楽しみに乗車する観光客も少なくありません。ちなみに、叡電本体の積極的なPRというのは、チラシやサイト等での告知だけでなく、車内アナウンスや紅葉シーズンのライトアップ、さらにはその期間中にかぎってのスロー運転などです。西に嵐電の桜のトンネル(北野線宇多野駅と鳴滝駅の間)があるように、東には叡電のもみじのトンネルありとばかり、乗る楽しみが味わえる路線となっています。なお、市原・二ノ瀬・貴船口の区間は、このもみじのトンネルのほか、二ノ瀬駅のログハウスっぽい待合室や、森を突き抜けて高架橋に差し掛かる列車(貴船口駅手前、車内からは見えません)など、路線全体を外側から眺める楽しみが随所に散りばめられています。

[きららとひえい]

次に車両の楽しみ。これは鞍馬本線を走る「きらら」と、叡山本線の「ひえい」です。展望車両と銘打たれた「きらら」は、宝ヶ池駅から鞍馬駅の間の車窓風景を存分に楽しめるように窓を大きくデザインしたり、車両中央の8席(各車両4シートずつ)が窓向きに配置されていたりする車両です。運行状況は曜日によって異なり、多い時は約40分間隔での走行となっています。窓向きシートに座ると元田中駅や茶山駅あたりで家々の屋根が至近距離で飛び過ぎていく景色は車酔いを誘発しかねませんが、宝ヶ池駅ぐらいからは心地よい車窓となり、もみじのトンネルを含む美しい景色を堪能することができます。一方の「ひえい」は2018年の春に導入されて叡山本線を往復する観光列車です。神秘性をアピールする深緑色と楕円がモチーフのユニークなデザインとなったいて、全席対面型で幅広のシートに設計されています。そして乗客目線での最大の特徴となるのが車両中央部にある床まで届く大型窓(これも楕円形)です。一風、変わった雰囲気の車両ですが、比叡山の宗教性や歴史性を可視的にイメージした車両といっていいでしょう。運行は「きらら」と同じく約40分に1本となるようにダイヤが組まれています。

[きらら×きららプロジェクト]

これらに加えて、叡電の取り組みとして特徴的なのが2011年から断続的に実施されている「きらら×きららプロジェクト」です。展望列車の名前と同じなのが縁で、四コママンガの連載誌「まんがタイムきらら」(芳文社)とタイアップする企画の総称で、ラッピング車両やヘッドマークの掲出、キャラクターが印刷された特別乗車券の販売、コラボポスターの制作などアニメファンの心を鷲づかみにする企画が連発されています。またアニメ作品で沿線が舞台になった時は、きらら誌とは関係がなくてもコラボ企画が積極的に実施されていますので、一部では叡電=アニメ列車といった評判も定着しています。