「蟹の恩返し」の伝承地で知られる「蟹満寺」

蟹満寺

京都郊外、木津川ののどかな集落に建つ、真言宗智山派の「蟹満寺(かにまんじ)」。開基や由緒については明らかになっていないものの、周辺の発掘調査などにより約1300年前の白鳳期に建立、秦氏の氏寺と推測されています。元徳元年(1711)に智積院の僧・亮範が再興。平安時代の「今昔物語」にも登場する「蟹の恩返し」の伝承地として知られています。

その昔、観音様の信仰厚い娘が、村人に捕まっていた蟹を助けます。後日、蛇に求婚され窮地に追い込まれた娘が観音様に祈ったところ、たくさんの蟹がやって来て蛇を退治するという話です。娘とその父親は、娘の身代わりになった多くの蟹と退治された蛇を弔うため、お堂を建てて観音様を祀ったといわれています。本堂に「蟹の恩返し」の縁起を描いた額が並べて掲げられ、紙芝居のように目で追うことができます。

境内の蟹の御紋にも注目してみましょう

蟹満寺
蟹満寺
蟹満寺
蟹が蛇を退治する様子を描いた扁額のほか、屋根瓦など境内のあちこちで蟹の御紋を見ることができます。「蟹満寺」の創建説話の由来とされる観音様とあわせて拝観したいですね。

脚気や足腰の諸病を封じるとされる、国宝の釈迦如来坐像

蟹満寺
本堂にはご本尊の釈迦如来坐像が安置され、国宝に指定されています。高さ2m40cmほどの黒光りする金剛仏で、大きな頭に引き締まった体躯を持ち、流れるように表現された衣文(えもん)が見事。頭は球状で、螺髪(らはつ)が見られないのも特徴です。発掘調査の際に白鳳期の大規模な寺院の遺構が発見されたことにより、当時からこの地を離れていない本尊ではないかと推測されています。本堂はかつて江戸時代中期に建てられたものでしたが、建て替えにより2010年に新しい本堂が誕生しました。

毎年4月には「蟹供養放生会」も行われています

「蟹満寺」があるのは、京都の南、奈良との県境に広がる地域・南山城。木津川に天神川が流れる綺田(かばた)の地に建つことから「紙幡寺(かばたでら)」などとも呼ばれています。昔ながらの田園風景が広がる地域に残る古刹で出会う逸話や国宝仏。まちなかの寺院にはない趣や魅力にも触れることができそうです。

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蟹満寺(かにまんじ)
●京都府木津川市山城町綺田浜36 ●JR棚倉駅から徒歩20分