
京都の嵐山と亀岡市を結ぶ嵯峨野観光鉄道トロッコ列車。紅葉の季節はもちろん、四季折々の景観が楽しめるとあって、多くの観光客に親しまれています。海外での人気も高く、外国人団体客の利用も少なくありません。状況によっては座席が売り切れていることもあるので、利用時には事前に予約を入れるようにしましょう。
嵯峨野観光鉄道は、JR嵯峨野線の嵯峨嵐山駅(旧名嵯峨駅)と亀岡駅の間で、新線敷設に伴って廃線となった旧線を活用するため、1991年より運行が始まった観光専用路線です。名勝として名高い保津峡に沿って走るこの区間は、JR時代からも観光資源としての価値が注目されていました。廃線によってJRから切り離されたことを受け、子会社の嵯峨野観光鉄道が設立されて観光に特化した路線として再出発したのでした。運行する車両をディーゼル機関車に連結されたトロッコ列車にしたのは、レトロな雰囲気を出すためだけでなく、ディーゼル特有の低速走行が車窓風景を楽しむのにも適しているからでした。また緋色と山吹色を基調とした幾何学的デザイン(アール・デコ風)の車両は、近年流行の観光車両の先駆けのような面もあります。水流と奇岩が織りなす景勝
保津峡は、丹波高原から京都盆地へ流れ下る桂川が、複雑に屈曲を重ねながら愛宕山の南側をえぐってつくりあげた渓谷です。高瀬川の開削でも知られる江戸時代の豪商・角倉了以が、丹波と京都を結ぶ輸送路に水運を活用すべく掘削したことで知られています。そうした大規模な土木工事を経て、水流と奇岩が織りなす景勝は、早い段階から都の人々も知るところとなっていました。明治時代には渓谷に沿って鉄道も敷設されるのですが、それが現在のJR山陰線の前身です。車窓に広がる大パノラマ
トロッコ列車は、JR嵯峨嵐山駅に隣接するトロッコ嵯峨駅と亀岡市のトロッコ亀岡駅の間7.3キロを約25分で走行し、途中にはトロッコ嵐山駅と保津峡駅が設けられています。車窓から眺める保津峡の大パノラマが最大の見どころで、トンネルを通過する一部区間を除き、ほぼ全線で桜や紅葉など季節の彩りを楽しむことができます。10月中旬から12月中旬の時季にはライトアップも行われ、紅葉が盛りを迎える頃には夕闇に浮かび上がる鮮紅が車窓を飾ります。

