10月上旬の京都は、紅葉の朱に秋の色彩を求めるのなら、まだオフシーズン。フライング気味に色づき始める個体もありますが、おおよその傾向で言うなら時期尚早です。しかし、だからこそ比較的空いている状態でゆっくり楽しめるというメリットもあります。曼殊院門跡や詩仙堂などでは紅葉がちらほらと見られるかもしれませんし、落葉樹の緑の葉が黄色に変わっていくぐらいのタイミングなので糺の森などで微かな秋の気配を感じてみてはどうでしょう。
秋色探しはいつから?
10月上旬の京都は、まだ秋にはなっていません。年によっては夏の暑さが続いているくらいなので、10月の秋色探しは時期尚早というべきです。それでもまったくの空振りになるわけではなく、見方を絞れば気配ぐらいは感じ取れる場所もあります。
糺の森は下鴨神社の神域に広がる古代林です。平安京が築かれた頃より下鴨神社の境内は聖なる場所として尊ばれてきましたので、人の手が加わることなく、たくさんの古木が現代に残っています。環境保全の観点からも立入禁止のエリアも少なくありませんが、下鴨神社の楼門に続く参道や、その西側の馬場などは一般の人たちの散歩スポットとなっています。
夏の暑さが落ち着き始めた頃に参道、とりわけ馬場の方で木々の色に注目してみましょう。秋というと鮮やかに染まる紅の印象が強いのですが、その一段階手前、緑の木の葉が黄色に変わり始めているのがわかります。糺の森は、ケヤキやムクノキといった広葉樹を中心とした植生となっています。これらの葉の色に変化が現れてくるのが10月頃でしょう。はっきりと目に見えて色づきが変わってくるのは11月を待たねばならないと思いますが、移ろいが早い年なら10月上旬でも黄ばみ始める木もあります。
京都府立植物園
糺の森のように、さまざまな種類の木々が集まっている場所というと、北山の府立植物園を措いては語れません。敷地中央の芝生広場の北側の森は、植物生態園と名付けられており、各地の山野に自生する植物が自然に近い形で育成されています。足繁く通っていないと、微妙な変化には気付きませんが、さまざまな環境が再現されていますので10月には10月の色が現れています。
イチョウの黄葉やソメイヨシノの紅葉のように、ひと目でそれとわかる変化は、やはり11月になってからですが、生態園の変化に反応できるアンテナを持っている方なら、夏から秋への移ろいが感じられるスポットです。
電話:075-701-0141
開園時間:開園時間9:00~16:00(17:00閉園)
入場料金::一般200円・高校生150円・中学生以下無料・70歳以上、障害者手帳持参者は証明提示で無料
アクセス:【電車】地下鉄北山駅すぐ・【バス】植物園前下車徒歩5分
京北エリア
地下鉄や市バスでかんたんに移動できる、いわゆる市街地の範囲では10月上旬で秋を堪能できる場所はほとんどありません。それでもひと足早く秋めいた気分をお望みの場合は、思い切って京北方面に遠出してみてはいかがでしょう。京北というのは、現行の行政区分では京都市右京区に含まれていますが、かつては京都市の北側に隣接する京北町だったエリアです。京都の中心部に比べて大きく北へ移動するわけですから、標高も高く、平均気温も低くなります。すなわちひと足もふた足も早く秋に近づいているということです。そんな京北エリアでの見どころを挙げるなら、常照皇寺があります。もっとも常照皇寺が観光目線で注目されるのはほとんど春に限られています。というのは庭に「九重桜」「左近桜」「御車返し」の名付けられた銘木があり、北の桜名所として知られているからです。
しかし、桜の木は、その葉が赤茶けて紅葉する品種です。落葉前のタイミングに間に合えば、サクラモミジ(くすんだ赤味を帯びた桜の葉のこと)が庭に舞うシーンと出会える可能性があります。また10月といえば京都の中心部では22日に時代祭が催されます。実は、この時代祭は京北と少なからずの縁があります。それは時代祭の代名詞でもある時代行列、その先頭を飾る維新勤王隊列が、京北エリアの山国という地域で組織された農兵隊をモチーフにしているからです。山国隊と呼ばれた組織で、明治の当時にも特異な軍装と凱旋時の軍楽が京童たちの耳目を引いたそうです。
時代祭が始まった最初の頃は山国隊が再結成されて行列に参加していたそうですが、現在の維新勤王隊列は、ベースでは山国隊の姿を継承しつつ、装束も演奏もアレンジが加わっているそうです。10月に京北エリアを訪れるのなら、小さな郷社ですが山国隊を記念する山国神社へも足を運んでみてはいかがでしょう。
常照皇寺
常照皇寺は、北朝初代である光厳上皇が出家後開創した、皇室にゆかりのある寺院です。紅葉のピークには、紅葉した木々が重なり合うように見えることから、「十二単」とも称されています。参道や奥庭のう美しい紅葉が見どころです。
電話:075-853-0003
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:300~500円(志納制)
アクセス:【バス】国御陵前(徒歩約7分)
山国神社
山国隊ゆかりの神社です。拝観は自由に可能です。所在地:京都市右京区京北鳥居町宮ノ元1番地
電話:0771-53-0026
アクセス:【バス】JRバス「周山」で下車し、ふるさとバス乗換え「鳥居」で下車徒歩約3分
大原エリアや雲ヶ畑
京北エリアほどではありませんが、高野川上流の大原、または賀茂川上流の雲ヶ畑あたりも、早めの秋と出会える可能性があるエリアです。大原であれば三千院や寂光院でしょうし、雲ヶ畑なら志明院を訪れてみれば、10月上旬でも秋の訪れが感じられるかも知れません。紅葉は見られなかったとしても、三千院には有清園の杉苔の中からわらべ地蔵が顔を覗かせて出迎えてくれたり、寂光院では背後の自然豊かな山々が夏の若々しい緑から秋の深みのある緑に変わり、平家物語縁の静かな雰囲気を楽しめますよ。
三千院
大原の高台に位置している三千院は、京都の紅葉の名所として知られています。苔の緑色と紅葉の赤とのコントラストは、非常に素晴らしいものです。
電話:075-744-2531
拝観時間:9:00~17:00(11月は8:30~17:00)
拝観料金:700円
アクセス:【バス】「大原」下車徒歩約10分
寂光院
「平家物語」のゆかりの地である寂光院は、秋になると美しい紅葉で彩られます。特に、真っ赤に染まった山門へと続く石段は、一番の見どころです。
電話:075-744-3341
拝観時間:9:00~17:00(12~2月は16:30)
拝観料金:600円
アクセス:【バス】「大原」下車徒歩約15分
左京区エリア
左京区エリアでは、曼殊院門跡と詩仙堂をご紹介します。曼殊院門跡は天台宗の寺院で、古今和歌集の心を映した枯山水庭園が有名です。紅葉の見ごろになると白い砂に紅葉の色が映えて、美しいので、紅葉名所として人気が高いです。見ごろが10月上旬から12月上旬とされていることもあり、年によって違いますが、若干の紅葉が見られる可能性があります。詩仙堂は日本庭園の美しさに鹿おどしの軽やかな音色が加わり、一層美しい和の風景を演出してくれます。こちらも紅葉の見ごろが10月上旬から12月上旬とされているので、ちらほらと色づく葉で秋の訪れを感じられるかもしれません。一年を通して花の美しい庭園なので、他の季節に訪れるのもおすすめです。
曼殊院門跡
枯山水庭園が有名な曼殊院門跡。この庭園には、「古今和歌伝授」という古今和歌集の精神が取り入れられているのです。白砂と真っ赤な紅葉とのコントラストは、非常に美しい風景です。
電話:075-781-5010
拝観時間:9:00~17:00(受付終了16:30)
拝観料金:600円
アクセス:【バス】「一乗寺清水町」下車徒歩約20分
詩仙堂
静寂に包まれた詩仙堂では、鹿おどしの音と共に静かな秋を楽しむことができます。美しい紅葉に囲まれたお庭をゆっくりとお散歩してみてはいかがでしょうか?
電話:075-781-2954
拝観時間:9:00~17:00(受付終了16:45)
拝観料金:500円
アクセス:【バス】「一乗寺下り松町」下車徒歩約7分
東山エリア
高台寺
紅葉シーズンになると各所でライトアップイベントが盛んに行われます。そんなライトアップで一番人気を集めるのが高台寺です。日中に見る紅葉もさることながら夜にはまったく違う世界へと変わります。10月だと紅葉はまだ見ごろとはいえませんが、わずかに色づいた紅葉だとしてもライトアップに照らされることで十分に見る価値はあります。プロジェクションマッピングなど、高台寺でしか見ることのできないライトアップをぜひ見に行ってみてください。
拝観時間:9:00~17:00
2021年 秋の夜間特別拝観:2021年10月22日(金)〜12月12日(日)
17時点灯 閉門22時(最終受付21時30分)
拝観料:600円
秋の本番はやはり11月
年によっての早い遅いはありますが、時代祭とハロウィーンの喧噪が終わってからが、京都の紅葉シーズンは始まります。情報系のサイトでも、京都府域全体を視野に入れているところであれば、宮津や舞鶴など日本海側の都合がありますので10月の中旬には紅葉シーズン仕様になっていますが、京都市域に限る場合は早くても10月下旬、標準的なパターンなら11月になってからです。
京都では、11月下旬にピークを迎える名所が多いですが、中には11月中旬に見ごろを迎える名所も多く点在していますので、少しでも早い時期に紅葉を楽しみたいという方は、少し早い11月中旬頃に見ごろのピークを迎える名所を訪れてみましょう。
京都の紅葉観光の際の注意点
移動は電車または徒歩で混雑を回避
季節を問わず、一年中多くの観光客で賑わっている京都ですが、紅葉のシーズンになるとさらに混雑することが予想されます。当然、京都市内の道路も混雑することが予想されますので、バスやタクシーでの移動は時間が読めず、予定通りに観光できないことも。ですので、紅葉観光の際は電車や徒歩で移動することをおすすめします。
歩きやすい靴
京都の紅葉の名所は、山の中腹や裾野に多く点在しているため、そういった場合は坂道や石段などを歩くことになります。ヒールの高い靴や歩きなれていない靴だと、靴擦れや脚の疲れにもつながってしまいますので、歩きやすい靴でお出かけしてください。夜間の拝観は暖かい服装で
夜間ライトアップをお目当てに、夜にお出かけする方も多いかと思いますが、その際は上着やホッカイロなどで寒さ対策を万全にしましょう。日中は陽が出て暖かくても、夜になると途端に冷え込んできますので、天気が良くても油断せずに上着を持ち歩いてください。