
叡電の「えぇきっぷ」は叡山電鉄全線が対象のフリーパス。叡電を交通手段としてではなく、乗車自体を目的に楽しむ場合は必須のツールとなってきます。街並みとホームの調和を楽しんだり、駅舎自体が持つ魅力を味わったり、それに加えてお得なオプションもついていますので、利用価値が高い乗車券です。
叡山電鉄は、左京区の観光スポットにアクセス便利なローカル鉄道です。近年は単なる交通手段としての利用に留まらず、叡電に乗ること自体を楽しみにする動きも出てきています。展望列車「きらら」や観光列車「ひえい」の運行によるところも少なくありませんが、路線自体が持っている魅力も大きいように思われます。そうした叡電および叡電沿線を存分に楽しむには、全線対象の1日乗車券「えぇきっぷ」(販売価格1000円)が便利です。今回は、この「えぇきっぷ」を使って乗降を繰り返す場合のお奨めを紹介します。風景に溶けこんだホーム
森の駅
ホームそれ自体の魅力を言うのであれば、木立に隠れるように設置されていて森の駅という表現がひったりの貴船口駅がイチオシです。しかし、ダークホース的な推しを入れるのは二ノ瀬駅です。出町柳方面(上り)のホームにあるログハウス調の待合室が独特の趣きを出しているからです。二ノ瀬駅は、街なかどころか、山裾にぽつんと置かれたといった風情の駅です。そこにログハウスですので、絵になる風景と言っていいでしょう。また二ノ瀬駅は、近くのバス通り(旧府道38号線)まで出ると、山裾を走る線路を遠望することができます。これもまたいい眺めですので、一度お試しください。天狗と出会う場所
さて、駅舎(ホーム)の話題になると特筆せねばならないのは、やはり鞍馬駅の存在です。線路にプラットホームが付くだけの簡単が設備がほとんんどの叡電各駅にあって、始発の出町柳駅や叡山本線終点の八瀬比叡山口駅とともに、立派な駅舎を備えているのが鞍馬線終点の鞍馬駅です。入母屋式で二層構造の屋根を持った古民家風たたずまいという外観なので、鞍馬の雰囲気とみごとに調和しているのです。加えて駅舎内のディスプレイ。壁に吊されているのは10月の火祭りに使われる松明(相当な大きさですが、それでも子供用なのだとか)であり、反対側の壁には源義経をモチーフとした錦絵がずらり。これらは幕末から明治期にかけて活躍した絵師月岡芳年の作品で、牛若丸伝説に因むディスプレイです。鞍馬を舞台とした牛若丸伝説ですので、天狗が描かれた絵も多く、駅舎を出たところに設置されている天狗モニュメントと並んで、鞍馬の鞍馬らしさを表現するアイテムです。

