京都の紅葉スポット、有名どころの三尾、永観堂、東福寺、嵐山など。王道中の王道を改めて総ざらえ。

京都の紅葉スポット、有名どころの三尾、永観堂、東福寺、嵐山など。王道中の王道を改めて総ざらえ。

京都の紅葉スポットで有名どころを訊ねられると、三尾、永観堂、清水寺、東福寺、嵯峨野、嵐山などの名前を並べていくのが普通です。マニアック路線を狙って、最初からマイナースポットに向かうのも悪くありませんが、まずは王道攻略、いわゆる有名どころの紅葉をきちんと評価しておきたいものです。

ここ最近で人気の出ているところもたくさんあるのが京都の紅葉スポット。でも半世紀以上の昔から、もっと言うなら江戸時代ぐらいから人気の場所が、いわゆる定番と呼ばれる場所です。三尾であったり、永観堂であったりの、そうした定番を知った上で新しい名所に足を運べば、京都の楽しみがよく深くなってきます。

三尾(高山寺・西明寺、神護寺)

神護寺の紅葉清滝川上流の三寺は山号を付けて栂尾山高山寺、槙尾山西明寺、高雄山神護寺と呼ばれています。この栂尾・槙尾・高雄(高尾)を三つの尾、すなわち三尾が総称となり、古来、紅葉の名勝として知られてきました。古く江戸時代に著された地誌にも「この所はむかしより紅葉の名所にて」との記述が見られます(都名所図会の神護寺)。実際、神護寺石段や高山寺金堂を彩る紅葉だけでなく、錦雲渓の異名をもつ清滝川の鮮紅は、京都の紅葉シーズン開幕を告げる一大ページェントです。

永観堂

永観堂の紅葉三尾と並んで古くからの紅葉の名所として名高いのが永観堂で「もみじの永観堂」というフレーズは昭和期のガイドブックでもしきりに用いられています。また近代短歌に興味のある方なら、与謝野鉄幹を挟んでの鳳晶子と山川登美子のドロドロした恋を思い出すかも知れません。かの明治のロマンスは、他ならぬ秋の永観堂を舞台にしたもので、与謝野晶子を慕う人たちの建てた歌碑が境内に残されています。永観堂の紅葉は、境内に植えられているイロハモミジの圧倒的な多さによって際立っています本堂裏手の高台にある多宝塔の場所まで上れば、放生池まわりの木々も眼下に収まるので「秋はもみじの永観堂」を実感することができます

清水寺

京都清水寺の夜景春夏秋冬、一年を通じてたくさんの観光客を迎えるのが清水寺。しかし秋の風景は格別です。本堂舞台から見下ろす景観は、いつしか三尾の秋にも劣らないと言われるようになり、舞台前の窪地か清滝川の異名である錦雲渓の名で呼ばれるようになりました。また奥の院から眺める本堂舞台が紅葉に包まれて見える景色も秋の清水寺を印象づける象徴的なアングルです。なお現在の清水寺は本堂の檜皮屋根の葺き替え工事が行われています。

東福寺

東福寺通天橋の紅葉紅葉の定番スポットで、もう一つ名高いのが東山本町の東福寺。東福寺の境内には東南の稲荷山方面より小川が流れ込んでおり、洗玉瀾と呼ばれるこの小川の周囲は、多くの堂宇が並ぶ地面より低い窪地を作っています。その結果、洗玉瀾のまわりの木立が色づく秋には、小川を跨ぐ橋廊の通天橋が紅葉の上に浮かぶような景観を作り出しますこの通天橋を眺める臥雲橋(こちらも橋廊ですがその構造は目立っていません)や通天橋から眺める洗玉瀾の紅葉が東福寺の秋を語るシンボリックな景色となっています。

二尊院

京都二尊院の紅葉嵐山も秋が美しい名所として取り上げられることが多いのですが、嵐山(山名)と大堰川を眺める渡月橋を除き、ピンポイントで拝観スポットを選ぶとすれば、二尊院になります。総門から境内にいたる参道は「紅葉の馬場」と呼ばれ、木々が燃える頃には圧倒的な眺めとなって迫ってきます

祇王寺

嵐山で拝観スポットをもう一つ選ぶなら祇王寺でしょう。嵯峨野や嵐山には悲しい恋が似合うというのは、昭和世代の女性が抱いていた感覚ですが、そんなイメージ形成に一役買ったのが祇王寺です。名前の由来となった祇王の物語(平家物語)だけでなく、祇王寺の再建に尽力した高岡智照尼(戦前の新橋で人気を博していた芸者、出家して祇王寺に入った方)の物語、さらには彼女の人生をモデルにした瀬戸内寂聴の小説『女徳』、これらの影響によって1970年代以降に人気スポットとなった場所です。近年は、そうした属性から注目されるのではなく、苔庭と紅葉の美しさが取り上げられる場所となっています。

古い名所と新しい名所

京都の有名な紅葉スポットということで、もう何十年にもわたって評判が確立しているスポットを挙げました。言うまでもなく、ここ数年の範囲で人気スポットになったところを挙げていくと、上に並べた以外の場所になります。ずっと非公開だったところが公開に転じて人気が出たケースもあるでしょうし、SNSを通じて、話題が従来とは違った形での広がり方をしたケースもあるでしょう。旅行会社とのタイアップ等が関係するケースもあるかも知れません。それらはまた別の記事でご紹介させていただくことにして、今回は京都の秋の王道を行くというコンセプトにさせていただきました。新しい人気は注目に値しますが、評価をご自身の目で下す意味からも、昔ながらの王道スポットを見直してみてはいかがでしょう。