八瀬の新名所、瑠璃光院を一躍人気スポットに押し上げたのが「鏡紅葉」の景観。反射のタイミングで見映えも変わる「鏡ナニナニ」の世界をご紹介。

八瀬の新名所、瑠璃光院を一躍人気スポットに押し上げたのが「鏡紅葉」の景観。反射のタイミングで見映えも変わる「鏡ナニナニ」の世界をご紹介。

水面や床に紅葉が映り込むことで生まれる「鏡紅葉」。本体が魅せる美しさに加えて、リフレクションの妙によって味わいが2倍にも3倍にもなることがあります。すでに喧伝されているスポットの鏡紅葉を訪れるにもいいですが、「鏡ナニナニ」が生成される条件を知って自力で新しい「鏡ナニナニ」を発見してみてはいかがでしょう。

最近は「鏡ナニナニ」という言い回しが、流行っているとかいないとか。そんなの聞いたことないぞと言う方のために説明をするとすれば、要は、美しい名勝や景色が鏡あるいは鏡に似て光沢の強いものに映って二つに見える現象のことです。有名なものを挙げるなら、千円札のデザインにも用いられている本栖湖と富士山あたりが分かりやすいでしょうか。伝統的な呼び名である「逆さ富士」という名前があるので、わざわざこれを呼び替えるのはどうかとは思いますが、「鏡ナニナニ」の理屈を適用するなら、本栖湖+富士山の眺めは「鏡富士」ということになります。さて、富士山は富士山マニアの方々に任せるとして、京都を舞台にした「鏡紅葉」が今回のテーマです。もうお分かりかと思いますが「鏡紅葉」とは、鏡様のものに映り込んだ紅葉が実景と絶妙のコントラストをなして美しく映える様子を指しています。その代表的なスポットのいくつかをご紹介するのが、今回のテーマです。

瑠璃公園、瑠璃の庭と鏡紅葉

錦秋の瑠璃光院八瀬の新名所、瑠璃光院。近年は来訪者の制限もせねばならないくらいに混み合ってしまうくらいの人気スポットとなっていますが、この場所の魅力は、「瑠璃の庭」という書院に面する庭です。紅葉の季節には真っ赤に染まる庭園は印象派の絵画を思わせるくらいの美しさがあります。そして、その眺めをさらに引き立てるのが磨き込まれたテーブルや床に映り込む紅葉です。秋の紅葉だけでなく、新緑の季節にも一般公開が行われるので、インスタ映えする1枚を狙って多くの人が訪れる、それが八瀬の瑠璃光院です。

岩倉実相院の床紅葉

これと同じように、床に映り込む紅葉の美しさで知られるのが岩倉の門跡寺院、実相院です。ところが、こちらの方は撮影のためのベストスポットを巡ってトラブルでも生じたのか、それともインスタ映え狙いの人たちが起こす滞留が度を超したのか、肝心の床紅葉が観賞できる場所は撮影禁止となってしまいました。ご自身の目で眺めた美しい景色を多くの人と共有したい気持ちは理解できますし、それは誰しも抱くものです。しかし、その美しさを提供してくれる場所に嫌がられる振る舞いをしてしまうのは考えものです。ひと昔前にグルメブームと呼ばれる流行がありました。京都の某中華料理店のチャーハンが絶品と雑誌や書籍で取り上げられたのですが、その結果、コースメニューで〆の一品だったチャーハンを単品で注文するお客が増えることとなって、お店の側はチャーハンのみのお客はお断りとの方針を打ち出すこととなりました。実相院の床紅葉撮影禁止をめぐっては、それぞれの立場に言い分はあるでしょうし、考えさせられる要素もたくさんありますが、かのチャーハン騒動と通じるものがあるような気もします。

自分で探す鏡紅葉

それはさておき、ネット等で喧伝されている情報ではなく、もしも鏡紅葉をご自身で探すことができたなら、それはきっと貴重な情報としてたくさんの支持を集めることになるでしょう。もちろん、京都の紅葉は多くの人がさまざまな場所のレポートを挙げています。そのため、さらに珍しいものを探し出すのは至難の業かも知れません。それでも池面に映るライトアップ時の紅葉(永観堂や醍醐寺)が鏡紅葉を生み出す典型的なパターンなのだとすれば、それと似た場所を探すことは難しくはないはずです。永観堂のライトアップライトアップまで揃うのがフルスペックだとして、そこまで行かないまでも池水回遊式の庭園があって紅葉が美しい場所という方向で絞っていくとすれば、銀閣寺や龍安寺なども候補に入ってくるでしょうし、山科の毘沙門堂もその条件は満たしています。お寺ばかりではなくて、北山の府立植物園もまた、弁天池まわりに注目すれば鏡紅葉の候補地に名乗りをあげるはずです。実際に訪れて鏡紅葉と遭遇できるかどうかは、天候その他の条件次第なところもあるでしょうが、瑠璃光院や実相院ばかりがその場所ではないというスタンスも必要なのではないでしょうか。

紅葉ではありませんが

ちなみに、紅葉ではありませんが、私が秘かにお奨めする鏡ナニナニは、京都駅ビルの壁面に映る京都タワー、今回の主旨に合わせるのなら「鏡京都タワー」です。比較的、混雑が少なめになる烏丸小路広場(駅ビルの東側ゾーン4F)がその舞台で、本物の京都タワーとスレート壁に映った京都タワーの二つが並び立つ眺めは、けっこう面白みがあります。またここに一雨がざっと降るようなことがあると、広場の地面がうっすらと水の幕が張られたような感じとなり、トリプル京都タワーが出現する場合もあります。