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叡山電車の八幡前駅から歩いて数分、上高野の地に建つ「三宅八幡宮(みやけはちまんぐう)」。太古、このあたり一帯は「小野郷とよばれ、古代豪族・小野氏の本拠地だったと伝えられています。飛鳥時代にあたる607年、聖徳太子の命で遣隋使となった小野妹子が九州の筑波を通る際に病を患いました。そこで、八幡宮の総本社・宇佐八幡宮で回復を祈願したところ、みるみるうちに全快し、任務を果たすことができたそう。推古天皇の頃(593~628)、隋から帰国した妹子が恩返しとして宇佐八幡を勧請したのが「三宅八幡宮」の起源といわれています。
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八幡神の応神天皇を祀り、宇佐八幡宮から石清水八幡宮へ八幡大神を勧請した際に白鳩が道案内をしたことから、八幡宮では鳩は神の使いとして大切にされてきたといわれています。神社の入口には狛犬ならぬ「狛鳩が鎮座。屋根瓦や石燈篭、提灯、拝殿の幕、絵馬など、いたるところに鳩の姿が施されています。
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つがいの「神鳩(しんばと)」を子育てのお守りに
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頭が赤く胴体が青い、つがいの鳩は「神鳩(しんばと)」と呼ばれ、絵馬に描かれているほか、お守りでも授与されます。独自の色合いは厄除けの意味からだそうで、素焼きのお守りは子育てのお守りで、強い子どもに育つといわれているそうですよ。
境内では本物の鳩の姿も見ることができるでしょう
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また、境内には鳩が自由にやって来て、のんびりと羽を休めています。「はとのえさ」も販売されているようで、鳩たちはこれを目当てにやって来るのかも知れませんね。
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境内の茶店では参拝者向けに、鳩をかたどった「鳩餅」も販売されています。
疳の虫封じや夜泣きなど、子どもの守り神としても知られる「虫八幡」
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当初は「田の虫封じ」の神が祀られ、害虫駆除などにご利益があったとか。それが転じて「疳(かん)虫封じや夜泣きなど、子どもの守り神としても信仰されるようになり、現在では「虫八幡」とも呼ばれ、親しまれています。
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また、明治天皇が幼い頃に重い病気を患い、こちらに祈祷を命じたところ治癒したことから、子どもの病気平癒や学業成就などの信仰にもご利益があるとされています。拝殿には願いごとを書いた赤ん坊の「よだれかけをずらりと奉納。お宮参りや七五三にも多くの親子連れが参拝します。
幕末から昭和初期の参拝の様子が緻密に描かれた絵馬を展示
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また、「三宅八幡神社奉納子育て祈願絵馬」124点が、2009年に国の「重要有形民俗文化財」に指定。境内には「絵馬展示資料館」も開館しています。幕末から昭和初期にかけて三宅八幡宮の参拝者が奉納した絵馬が展示され、絵馬の大きさなどもさまざま。参詣行列に参加する人々を描いたものや、子どもの様子が描き込まれたものなど、絵の緻密さに驚かされます。絵馬を通して当時の信仰ぶりを知ることができる貴重な資料館です。
鳥居前の神池は地元の人の憩いの場として親しまれています
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高野川と比叡山の豊かな水に恵まれた上高野は、かつて15基もの水車が動いていた田園地帯。境内の鳥居前には「神池」と呼ばれる小さな池があり、水車小屋や八瀬の鵜が谷から水を引いた噴水などがのどかな田園風景を引き立てています。
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春は桜、秋は紅葉の穴場スポットでもあります。
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歌碑に刻まれているのは「輪をかきて飛びいる鳩の先頭の一羽は群れの何を保障す」。鳩を題材に詠まれた歌ですが、三宅八幡宮との関わりはわかりません。
こちらの赤い鳥居からは境内まで少し距離があります
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京都バスの三宅八幡前の停留所で下りると見える、三宅八幡宮の赤い大きな鳥居。高野川に沿う旧若狭街道に通じる道にあり、一帯のシンボルにもなっています。こちらの鳥居からは表参道を通りますが、境内まで歩いて10分ほどかかります。
太古のロマンを感じる小野妹子創建の古刹
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平安京ができる前の飛鳥時代、小野妹子によって創建されたと伝わる「三宅八幡宮」。造営当初は、伊太多神社(現在は崇道神社の末社)の境内にある末社のひとつだったといわれています。応仁の乱の戦火によって全焼し、現在の本殿は明治20年(1887)、拝殿は明治2年(1869)に再建されたものですが、一帯には小野氏ゆかりのスポットも残り、太古のロマンを感じることができそうです。
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三宅八幡宮(三宅八幡宮)
●京都市左京区上高野三宅町22
●叡電八幡前駅から徒歩2分