
1本1本を注視するとそれほどでなくても全体で見ると印象が変わるものがあります。竹、および竹藪はそうしたものの1つです。嵐山は野宮地区の竹藪、広大な面積を誇った西山の竹林、あるいはライトアップされた夜の青蓮院の竹藪、これらを手がかりにして竹藪の美しさとは何だったのかを考えてみようと思います。
竹藪の美しさを積極的に考えてみたことはあるでしょうか。桜の華やかさ、イチョウやモミジの鮮やかさ、それらに比べて竹藪には人の目を強く惹きつける要素があるわけではありません。しかし、嵐山は「竹林の小径」のような、ある程度の広がりがある群生地を訪れて全体で眺めるなら、つまり竹藪として眺めるなら、そこに美しさが際立ってくることもあります。[嵯峨野の竹林、西山の竹林]
[洛西竹林公園]
[青蓮院の竹藪]
さて、このあたりで嵐山および西山方面より目を東山に転じてみようと思います。自然林だったかどうかはさておき、東山でも竹林の美しさを目にすることがあるからです。場所は、広大な庭園を持つ青蓮院門跡。かの門跡寺院が夜間拝観(ライトアップ)を実施するようになり、すでに20年ほどは経っているかと思います。そのかなり早い時期に訪れる機会があり、その際に目にした竹林への光線照射が強いインパクトを残したことを覚えています。昼間に眺めた時には、たいした印象も残さない竹藪なので規模は大きくはなかったのでしょう、それでも照射に選ばれた色や照射の方向、影の作り方などが巧妙で、その美しさに衝撃を受けたのでした。それより数年後に嵐山花灯路でライトアップされた「竹林の小径」を見た時には、むしろ工夫の少なさを味気なく思ったくらいでした。この青蓮院での竹林体験は、個人的な要素がかなり強いので竹林の一般的な美しさをいうものには当たらないかも知れません。それでも条件次第では、竹藪にもそうした美しさが宿ることがあることをわかってもらえるなら、それで十分です。

