東山の東福寺、京都屈指の紅葉名所として有名な禅寺の歴史と見どころ、混雑時の対応策などをまとめてどうぞ

東福寺

東山区の南端で、甲子園球場5個分とも言われる広大な敷地を占める東福寺、鎌倉時代に開かれて、古くより紅葉の名所として知られてきたこの禅刹の歴史を振り返るとともに、境内の見どころ、紅葉シーズンにおける立ち回り方、その他、知っておけば得するかも知れないトリビアの数々をご紹介します。

東大寺のように興福寺のように秋の京都を代表する紅葉名所の東福寺。その境内があるのは行政区分でいうと東山区の南端にあたります。東山区がもう伏見区になろうかというあたり、すなわち境界付近の一帯を占める広大な臨済宗のお寺です。京都の中心部からいえば、奈良に向かう大和大路、伏見街道沿いのお寺という言い方の方が分かりやすいでしょう。広さについては、本坊まわりだけでも甲子園球場の2倍ぐらいはあり、25に及ぶ塔頭を含めると敷地面積は20万平米以上とも言われて甲子園の5倍以上には達しています。この広大な寺院が創建されたのは鎌倉時代の中期です。建仁寺の開基、栄西禅師らの活躍によって、そのころ流行していたのが臨済禅、その影響をうけて九条相国こと藤原(九条)道家が聖一国師を招いて開いたのが東福寺です。道家は高さ5丈(約15m)の釈迦像を本尊とすることを発願しており、そのプランに沿っての建立でした。仏像と仏殿が落成したのが建長7年(1255年)で、この年が東福寺の建立年とされています。道家は創建にあたって「広大さにおいては東大寺のように、賑やかさにおいては興福寺のように、故に東福寺と命名する」と宣言し、都下随一の禅刹を目指したのでした。そうして九条家を始め、貴顕からの援助を集め、仏殿が落成して後も数々の堂宇が陸続と建造されていました。そうして13世紀末には塔頭も含めると広大な規模の境内を誇るようになっていたのです。ところが元応元年(1319年)に発生した火災によって、これら伽藍の多くは失われてしまいます。再建はすぐに行われますが、それから後も罹災と再興を何度となく繰り返して現代に至っています。

[貴重な建造物群]

貴重な建造物群現代の境内に立ち並ぶ堂宇群は、明治14年に起きた火災以降に再建されたものが多くなっていますが、三門は室町時代に足利義持(室町幕府4代将軍)によって再建されたもので、現存する禅寺三門の中では最古のものと言われ、国宝の指定を受けています。他に禅堂(南北朝時代、重要文化財)や開山堂(江戸時代、重要文化財)など、往時の面影を伝える建造物も少なくありません。これら建造物の中で取り立てて紹介しておきたいのは、東司(重要文化財)です。東司とは、要するにトイレットのこと。東福寺の東司は日本最大最古の禅宗式トイレと伝わっています。もちろん現在では実用に供されてはいませんが、多数の修行僧が使うことができたという意味で百雪隠との異名もあるそうです。

[洛陽の奇観]

洛陽さてそうしたトリビア的なお話は措くとして、この東福寺が紅葉スポットとして名を馳せているのは、方丈と開山堂をつなぐ通天橋からの眺めが圧倒的なものになっているからです。江戸時代の前期に出版された地誌にはすでに「橋下の楓葉は洛陽の奇観なり」と記されており、古くからの紅葉名所として知られていたことが窺われます。東福寺の境内は、本堂や方丈など主要伽藍が並ぶエリアの北側を洗玉澗という渓流が地面をえぐるように流れています。渓流まわりの窪地にはイロハモミジやオオカエデなど紅葉系の木々がたくさん植えられていて、洗玉澗を越える通天橋から眺める景観が絶景となっているのです。ピンポイントでの絶景スポットが喧伝されているだけあって、紅葉シーズンを迎えると押し寄せる観光客がその周囲に滞留して凄まじい状況となってしまいます。それを押してでも見る価値があるのは確かですが、紅葉の色づきがピークを迎える11月末(その年の気象条件次第では12月になることも)に訪れるのであれば、時間帯を考えるなど、それ相応の工夫も必要になります。

[本坊庭園の話]

本坊庭園あるいは、見どころを通天橋だけに求めるのではなく、現代の禅庭園としての評判が高い方丈の本坊庭園に向かうのもいいでしょう。国指定名勝としての登録名は「東福寺本坊庭園」ですが、方丈を四方から取り囲み、それぞれに趣きの異なる相貌を見せる庭には、かつては釈迦八相に因んで「八相の庭」という名前が与えられていました。現代の作庭家の重森三玲が昭和14年に完成させたこの庭は、枯山水をベースにして東西南北それぞれに伝統性と現代的感性が調和した美しさが漂っています。とりわけ有名なのは切石と苔の配置で市松模様を作り上げた北庭です。手前の四角は鮮明ながら、奥に向かうにつれて輪郭が曖昧に見えるように工夫されており、緩やかな自然の移ろいと人工的な矩形が調和する重森ならではセンスを見てとることができます。現代的な禅庭園として国際的な評価も高い作品です。

[東福寺の基本情報]

【所在地】京都市東山区本町15丁目778【電話番号】075-561-0087【拝観時間】9:00~16:30(受付終了16:00)※11月~12月初旬は8:30~・12月初旬~3月は16:00まで(受付終了15:30)【拝観料】通天橋・開山堂:400円、本坊庭園:400円【アクセス】JR奈良線「東福寺駅」下車徒歩約10分、京阪電鉄鳥羽街道駅から徒歩8分
~2019年のライトアップ情報~
【ライトアップ期間】11/17(日)~12/2(月)まで
【ライトアップ点灯時間】日没から19:30まで(受付は19:00まで)
【ライトアップ拝観料】600円(中高生は400円)
 

東福寺の紅葉は大人気スポットです。紅葉の時期は特に混雑しています。混雑回避方法としては、11月中旬のできる限り平日の早朝に拝観することをおすすめします。ライトアップを楽しみたい方は終了時間近く(19:00前)あたりがねらいめです!とは言っても混雑は免れないので、時間と気持ちに余裕を持ってお出かけしてください。

[東山の紅葉スポット]

東福寺が位置している京都・東山には、素晴らしい紅葉を楽しむことができる紅葉の名所が他にも多く点在しています。

清水寺

「清水の舞台」で有名な清水寺ですが、秋の紅葉シーズンになると圧倒的な美しい真っ赤な紅葉を鑑賞することができます。清水の舞台から臨むことができる「紅葉の海」は、「素晴らしい」の一言です。【所在地】京都市東山区清水1-294【電話番号】075-551-1234【拝観時間】6:00~18:00※9月1日~11月15日は6:00~18:00、11月16日~12月1日は6:00~17:30(夜間特別拝観21:00まで)【拝観料】400円【見頃】11月下旬~12月上旬【標高】約100~120m【紅葉樹種】モミジ・サクラ・カエデ【ライトアップ】期間→2018年の場合11月17日~12月2日時間:→7時30分~21時(受付終了)夜の特別拝観→大人400円、小人200円 

清水寺も大人気紅葉スポットです!例年見ごろである11月下旬から12月上旬には混雑必至です。少しでも混雑を避けるポイントをお伝えします。●土日祝日が混雑するので平日に行く●昼の部は10:00~16:00が混雑しているので早朝の開門直後がおすすめ●夜の部は17:30~20:00が混雑しているので16時以降、または17時30分前に並ぶか、20時以降がおすすめ※大人気紅葉スポットなので混雑はつきものです。時間にも気持ちにも余裕をもって楽しんでみてください。

【アクセス】市バス「清水道」・「五条坂」下車徒歩約10分

円山公園

京都最古の公園である円山公園は、鮮やかな紅葉を鑑賞できることでも知られています。池の周辺や奥へ進む石段の「モミジのトンネル」が見どころです。【所在地】京都市東山区円山町463【電話番号】075-222-3586【拝観時間】自由入園【拝観料】無料【見頃】11月中旬~12月上旬【標高】50~120m【紅葉樹種】イロハモミジ・サクラ・エノキ中央から東方面を望むのがオススメ。また丘の上から西方面を見下ろしてみるのも良い。園内の散策もオススメです。

円山公園も紅葉シーズンには混雑します。この公園は24時間いつでも入れますので、早朝にお散歩がてら行ってみるとゆっくり自分のペースで紅葉を楽しむことができるでしょう。

【アクセス】京阪「祇園四条駅」下車徒歩10分、地下鉄東西線「東山駅」下車徒歩10分、市バス「祇園」下車

高台寺

豊臣秀吉の正室である北政所(ねね)ゆかりのお寺として有名な高台寺。昼間の紅葉も素晴らしいものですが、日没後に行われるライトアップでは、光のアートと紅葉との融合を楽しむことができます。【所在地】京都府京都市東山区高台寺下河原町526【電話番号】075-561-9966【拝観時間】9:00~17:30(受付終了17:00)【拝観料】大人:600円、中高生:250円【見頃】11月中旬~12月上旬【標高】不明【紅葉樹】モミジ・カエデ他【ライトアップ】期間→2018年の場合、10月19日~12月9日時間→17時~21時30分【アクセス】市バス「東山安井」下車徒歩約7分

高台寺は、国内外問わず人気紅葉スポットです。11月中旬の見ごろを迎える頃は大変混雑してきます。ねらい目は平日の午前中です。また、昼の紅葉よりもライトアップされる17時以降はさらに混雑します。できる限りゆっくりとライトアップされた紅葉を楽しみたい方は、見ごろが終わる頃の12月上旬の21時ころがおすすめです。

南禅寺

秋の紅葉シーズンになると、壮大な三門を紅葉が色鮮やかに彩ります。境内はもちろん、山門の上からの京都市街の眺めも素晴らしいものです。【所在地】京都市左京区南禅寺福地町86【電話番号】075-771-0365【拝観時間】3~11月 8:40~17:00(受付終了16:40)、12~2月 8:40~16:30(受付終了16:10)【拝観料】境内無料、三門500円、方丈庭園500円【見頃】11月中旬~12月上旬【標高】不明【紅葉樹種】カエデ等【ライトアップ】期間→2018年の場合、11月15~30日(変更の可能性あり)時間→17時30分~20時45分 

南禅寺の紅葉は、11月上旬~12月下旬頃が見頃ですが、この期間土日祝日は大変混雑します。特に10時から15時頃は混雑する時間帯になっています。少しでも混雑を避けたい方は、平日の早い時間、混雑し始める10時前で、拝観開始時間の8時40分から利用すると、自分のペースでのんびり紅葉を楽しめますね。

 【アクセス】市バス「南禅寺・永観堂道」下車徒歩約10分、地下鉄東西線「蹴上駅」下車徒歩約10分

永観堂

永観堂は、古今和歌集で「もみじの永観堂」と詠まれるほど、古くから紅葉の名所として知られています。夜間ライトアップも行われ、昼間とは異なる幻想的な雰囲気を楽しむことができます。【所在地】京都府京都市左京区永観堂町48【電話番号】075-761-0007【拝観時間】9:00~17:00(受付終了16:00)【拝観料】600円(秋の寺宝展期間中は1,000円)【見頃】11月中旬~下旬【標高】不明【紅葉樹種】カエデ・イロハモミジ・オオモミジ(放生池の周辺にあるモミジの観賞がオススメです)【紅葉まつり】イベント名→寺宝展期間→2018年の場合、11月3日~12月2日 ※駐車場の利用は不可内容→普段は拝観することができない寺宝を特別公開【ライトアップ】期間→2018年の場合、11月3日~12月2日時間→17時30分~20時30分【アクセス】大人600円、小中高生 400円※夜間拝観(ライトアップ):一般(中学生以上)600円
~2019年のライトアップ情報~
【ライトアップ期間】11/6(水)~12/4(水)まで
【ライトアップ点灯時間】17:30~21:00(20:30受付終了)
【ライトアップ拝観料】大人1,000円、小中高生600円(ライトアップ期間中の値段です)

永観堂を紅葉シーズンを訪れるなら、平日の朝早くがおすすめです。土日祝日を避けて、平日の拝観時間(朝9時から夕方4時)の受付が始まる少し前に行けば、比較的混雑を避けられますよ。平日の9時がねらい目です。ライトアップも大変人気がありますが、こちらもライトアップが始まる頃の17時30分ころが比較的すいています。

哲学の道

哲学の道とは、銀閣寺から熊野若王子神社まで約2㎞続く、琵琶湖から引いた疎水流れに沿った散策路です。春の桜で有名ですが、秋の紅葉も素晴らしいもので、地元の方にはもちろん観光客からも人気の高い紅葉の名所です。【所在地】京都市左京区銀閣寺町付近~若王子町付近の疏水沿い【見頃】11月中旬~12月上旬【標高】不明【紅葉樹種】モミジ【アクセス】市バス「銀閣寺道」下車徒歩約3分

圓徳院

豊臣秀吉の正室ねねが晩年過ごしたことで知られている圓徳院は、高台寺の埠頭の一つです。北庭に広がる鮮やかな紅葉は、ライトアップされた様子も見事なものです。【所在地】京都府京都市東山区高台寺下河原町530【電話番号】075-525-0101【拝観時間】10:00~17:00(17:30閉門)【拝観料】大人:500円、中高生:200円※高台寺掌美術館との共通券900円【アクセス】阪急四条河原町駅から徒歩15分

知恩院

京都は東山三十六峰の一つでもある「華頂山」の麓に広がる浄土宗の総本山です。数多くの国宝や重要文化財の伽藍が並びます。秋には約200本にもなるいろはもみじが彩を添えます。【所在地】京都府京都市東山区高台寺下河原町530【電話番号】075-525-0101【拝観時間】9~16時【拝観料】境内は自由(友禅苑大人300円、小・中学生150円、方丈庭園 大人400円、小・中学生200円)※高台寺掌美術館との共通券900円ライトアップは大人(高校生以上)800円、小・中学生400円【見頃】11月中旬~12月上旬【紅葉樹種】モミジ他(境内・庭園の散策がおすすめです)【ライトアップ】期間→2018年1の場合、1月2日~12月2日時間→17時30分~21時30分(21時受付終了)【休み】無休【アクセス】阪急四条河原町駅から徒歩15分

将軍塚青龍殿

将軍塚青龍殿は京都の東山山頂に位置しているため、舞台からは秋色に染まった京都市街を一望することができます。また、鮮やかな紅葉に埋め尽くされたような境内を望むことができる展望台も人気のスポットです。歴史を感じさせられる枯山水庭園もまた、見どころの一つです。【所在地】京都市山科区厨子奥花鳥町28【電話番号】075-771-0390【拝観時間】9:00~17:00(受付終了16:30)【拝観料】大人500円、中・高生400円、小学生200円【見頃】11月中旬~12月上旬【紅葉樹種】モミジ、カエデ【ライトアップ】日没後~21時30分(21時受付終了)【休み】無休【アクセス】京阪バス「将軍塚青龍殿」下車すぐ(土日祝のみ運行)・地下鉄東西線「東山駅」からタクシーで約5分・青蓮院からタクシーで約10分 

<まとめ>いかがでしょうか。京都東山指折りの紅葉の名所は、国内からの観光客だけではなく海外からもたくさんの人が訪れます。昔から人々に親しまれてきた東山のお寺や紅葉を皆さんも一度は堪能してみてはいかがでしょうか。紅葉シーズンの混雑を避けるには早朝かライトアップが終わる頃がねらい目ですね。朝晩冷え込みも厳しくなってきますので、温かい服装でお出かけください。