毘沙門堂に勧修寺など山科には魅力的な観光物件がたくさんあります。京都観光の穴場ではない、山科独自のカラーもあります

毘沙門堂に勧修寺など山科には魅力的な観光物件がたくさんあります。京都観光の穴場ではない、山科独自のカラーもあります

山科区の観光物件は、京都観光の中でも穴場のような扱いがされることもあります。しかし同じ京都市に属するとはいえ、山科は京都とは地理的にも隔たっており、もとより別地域のようなところもありました。穴場と呼ぶことの是非は措くとしても、山科地域の観光物件について一度、振り返ってみるのも悪くありません。

京都観光の対象は、地理的にはおもに京都盆地に点在する神社仏閣を中心に行われます。金閣寺や銀閣寺はもちろん京都盆地の内側に含まれますし、東山の清水寺や嵐山の天龍寺などはほぼ東西の境界線付近に位置するスポットです。比叡山延暦寺についても、行政区分では大津市になったとしても地理的には境界線のスポットといえます。つまり、京都盆地および周囲の境界線付近のスポットが、いわば京都観光の対象となっているわけです。そういう地理的な理解を当てはめた時に異質性が浮かび上がるのが、行政区でいうところの伏見区と山科区です。伏見区については別のところでも触れましたので、今回は山科区についてのお話です。

山科盆地

地理的にいう山科区は、山科盆地とその周辺という説明がなされます。もう少し詳しく言うと、比叡山から如意ヶ岳(大文字山)、そして稲荷山まで続く東山の山並みによって京都盆地と隔てられた東側の地であり、かつ音羽山・笠取山によって琵琶湖西岸の平野部より隔てられた地ということになります。南方面は醍醐地区(伏見区)および宇治地区(宇治市)まで繋がっており、宇治川以北の経済圏を形作っています。こうして見ると、地理的には京都市域と別扱いになるのは明らかになるのですが、それでも行政上の区分で京都市という大きな枠組みの中に含まれますので、伏見区とともに”京都観光の穴場”といった扱いになることが少なくありません。地理的な事情に密着した捉え方をするのなら、京都観光とはもとより別枠の扱いになって然るべきなのですが、諸般の事情からなのか、京都観光の一環で語られるようになっています。

毘沙門堂の紅葉

京都毘沙門堂の紅葉さてそうした山科エリア、紅葉の時期に特化して見どころをあげるのであれば、まっさきにクローズアップされるのは毘沙門堂門跡です。金閣寺や銀閣寺、天龍寺や清水寺、そういった定番の観光スポットをめぐっているうちはなかなか視界にも入ってきませんが、一通りの京都観光を終えた上で改めてスポットを広げる段階になると、必ずといっていいほど取り上げられるスポットです。真っ赤な絨毯を敷きつめたように仁王門前の石段に広がる紅葉、山門をくぐった後なら心字池に映える鮮紅の木々、高台弁天堂の朱を引き立てる錦秋の色合い、さまざまな秋色が調和しつつ見る人に迫ってくるスポットです。洛中界隈なら永観堂の紅葉は古くから評判のスポットとなっていますが、毘沙門堂の紅葉もけっしてそれに劣るものではありません。地下鉄山科駅から毘沙門堂に至る途中にある山科疏水の安朱橋と併せれば、岡崎のインクライン〜南禅寺〜永観堂に匹敵するくらいの見どころとなります。ちなみに山科界隈を楽しむ際、地域に南北に走る地下鉄は力強い味方となります。

大石神社と勧修寺

毘沙門堂が山科駅近くであるなら、地下鉄に戻り、次には椥辻駅に向かいます。駅より新十条通を徒歩で20分強と少しばかり距離はありますが、山科盆地西端の山ぎわ、大石神社が目的地です。大石桜と名付けられたサクラで有名なスポットですが、秋の彩りを引き立てるモミジもたくさん植わっています。あるいは大石神社を省略しておいて、小野駅から勧修寺に向かうのもいいでしょう。苑池の氷室池を中心した回遊式庭園は、毘沙門堂とともに山科観光の目玉といっていいスポットであり、季節折々の彩りをみせる木々に移り変わる秋の趣きを感じ取ることができます。なお椥辻駅〜大石神社〜勧修寺という行程も、あながち不可能ではありませんが、それぞれのスポットを繋ぐのに徒歩20分程度ずつは要することになるため、最初からタウンウォーキングの心づもりが必要になってきます

締めの醍醐地区

紅葉の醍醐寺ここで再度、地下鉄線に戻り、次に向かうは醍醐駅、そして世界遺産の1つ、醍醐寺です。行政区分に当てはめると、ここで伏見区に入ることになるのですが、山科区と伏見区醍醐地区は行政区分で分けられる以上につながりが深いとも言われます。確かに醍醐地区は、伏見の中心地区とは大岩山によって隔てられる形になっているのに対し、山科盆地に対しては同一平地の延長上に位置していることになっているので繋がりの深さでいえば後者の方に軍配は挙がるでしょう。それはさておき、山科エリアの紅葉ツアー、その最後を締めるのに世界遺産の醍醐寺を持ってくるのは、ボリューム的にもちょうどいいというものでしょう。今年は台風の影響もあって、上醍醐の方は拝観ができない状態が続いていると聞きますが、三宝院や五重塔を中心とする下醍醐だけでも十分な見どころと言えます。