
京福電車の嵐山駅を降りて嵐山観光を始める時、一番最初に訪れる場所にあるのが臨済宗天龍寺派の総本山、天龍寺。一説によれば後醍醐天皇の怨霊を恐れた足利尊氏が鎮魂のために創建したのだとか。真実のほどはさておき、現在の天龍寺は嵐山を借景にした風光明媚のスポットです。
渡月橋の北側に位置する天龍寺。嵐山の顔といえば、渡月橋を挙げる人もいるでしょうし、竹林の小径こそが嵐山の嵐山たるゆえんと譲らない人もいます。しかし、なかには、京福電車嵐山駅を降りて、これから嵐山観光を始めようという時に、まっさきに目に飛び込んでくる天龍寺をもって、これこそが嵐山の顔と考える人もいます。後醍醐天皇の祟り
曹源池を眺める
続いて境内の拝観について。広大な境内では諸堂部分と庭園部分、および法堂が有料の拝観対象です。一番の見どころは曹源池を擁する庭園(一般に天龍寺庭園と呼ばれています)です。天龍寺の建物自体はたびたびの火災を経て造替を重ねているのに対して、庭園は夢想国師による創建当時の面影を留めるとされています。自然公園さながらに多くの木々が植えられている庭園なので、モミジをはじめ秋の彩りも存分に楽しむことができます。紅葉がもっとも鮮やかになる11月末が一番の見頃ですが、人出の方も著しくなることを考えると、少し早めのタイミングを選ぶのもいいかも知れません。紅葉にはややはやい11月上旬でも黄ばみ始めた木々の色合いは、それなりの見栄えを与えてくれます。庭園内の順路を歩いて各所を眺め廻るかたちでも十分に楽しめますが、天龍寺庭園の魅力がもっとも感じられるのは大方丈から曹源池を眺めた時です。池の奥の石組みから流れ落ちる流水が滝を表現し、そこに鯉魚石と名付けられた石を配したつくり、これは中国の故事、登竜門を踏まえるものだとか。また手前の岩島や浮島は方丈からの視点を意識して、借景となる嵐山との取り合わせで引き立つように配置されています。こうした眺めが楽しめるという意味でも、庭園散策だけで終わらせずに諸堂拝観を追加した拝観形式がお奨めとなります。拝観順路は諸堂拝観付きの形式では、庫裏より入って大方丈と小方丈(書院)および多宝殿まで行った後、折り返して庫裏に戻り、庭園に降りる形となっています。庭園散策のみの形式であれば、曹源池まわりの散策の後、北側の百花苑(昭和時代に整備された新しい庭園)を抜ければ北門を経て竹林の小径に出ることもできます。

