神社仏閣の紅葉も車窓の紅葉も悪くはないですが、遊覧船に揺られながら眺める秋色にはまた格別な味わいがあります

神社仏閣の紅葉も車窓の紅葉も悪くはないですが、遊覧船に揺られながら眺める秋色にはまた格別な味わいがあります

水郷とか水の都とか言うと、いかにも遊覧船サービスが似合いそうな雰囲気ですが、あいにく京都はそういうカテゴリーに入る街ではありません。しかし、遊覧船サービスがまったくないわけでありません。保津川下りは別格扱いとしておきますが、それ以外にもいくつか実施されている遊覧船サービスをご紹介します。

別格の保津川下りを除けば、京都の遊覧船サービスは、嵐山、岡崎、伏見で行われています。このうち岡崎の千石船は春から青葉の頃までなので、嵐山通船と伏見観光協会が運営する2つについて紹介します。

大堰川の嵐山通船

京都嵐山屋形船嵐山通船が屋形船事業を行うのは、大堰川の渡月橋から上流方向約1キロ弱の範囲です。形式は、一般遊覧用の乗合と貸切、鵜飼い(7月1日〜9月23日)見物用の乗合と貸切、それと貸ボートおよび期間限定の渡し船です。貸切タイプには遊覧用・鵜飼い見物用の両方で食事付きバージョンもあります。いろいろと細かく分かれていて煩雑なので、ここでは一般遊覧用の乗合と渡し船について説明します。

まず乗合の方から。乗合という言葉は、最近では耳にする機会が少なくなりましたが、要は不特定多数の人が一つの乗り物に一緒に乗ること、簡単に言うと相乗りのことです。路線バスが、遠い昔には乗合自動車と呼ばれていた時代もあるので、そのあたりから連想してください。

嵐山通船の遊覧船(乗合)は、料金1100円/1人で30分の大堰川遊覧コースです。渡月橋北詰の上流約350mぐらいのところある北乗り場および渡月橋南詰たもとの南乗り場の2箇所より随時出船(営業時間は9:00〜16:00)となっています。

渡し船は、春季は4〜5月のみ、秋季は10〜11月のみのサービスで、北側から南側へ、またはその逆を10分ほどかけてゆっくりと渡川します。ただし、こちらの乗り場は遊覧船のものとは異なっていて、北側は渡月橋よりずっと上流、約600mほどのところ(嵐山公園亀山地区への登り口からまだ上流)になり、南側は大悲閣のすぐ下ぐらいの場所(渡月橋南詰めからなら約1kmほど上流)です。乗り場が渡月橋からかなり離れていること、かつ分かりづらいので認知度は高くないようですが、乗船料金が400円と廉価になっていることもあってプチ遊覧のような捉え方もできます。

次に、煩雑に分かれている貸切用を簡単に紹介していきます。

●「食事付き遊覧船」
2名以上プランと10名以上プランがあります。
京都老舗料亭のお弁当や湯豆腐御膳など季節の食事を楽しむことができます。乗船時間の約60分においしい食事と紅葉狩りを家族旅行のオプション、恋人同士のデートプランとして利用してみてはいかがでしょうか。

●「貸切時間船」
食事は付いていませんが、
飲食の持ち込みができるので好きなお弁当やテイクアウトしてきたものを食べることができます。ガスコンロなどの火気は持ち込めませんのでご注意を。

●「遠足や修学旅行の学生限定の食事付き遊覧船」
15名以上で利用可能です。修学旅行の自由行動などで、一緒に船での紅葉狩りを満喫する計画を立ててみるのも楽しそうですね。


嵐山の紅葉は本当に美しく、船から眺める景色はもちろん最高ですが、川の水に映る紅葉もまた格別です。これからの時期一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

嵐山通船株式会社「北乗り場」

所在地:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町
電話:(075)861-0302
アクセス:京福嵐山駅から北乗船場へ徒歩10分・JR嵯峨嵐山駅から北乗船場へ徒歩20分

嵐山通船株式会社「南乗り場」

所在地:京都市西京区嵐山中尾下町
電話:(075)861-0302
アクセス:阪急嵐山駅から南乗船場へ徒歩10分

嵐山遊覧船周辺の観光名所

大悲閣千光寺

大悲閣千光寺は、嵐山の中心部から少し離れたところに位置している嵐山の穴場的な絶景スポットです。崖の上に立っているため、京都市街を一望することができます。
拝観時間:10:00~16:00
所在地:京都市西京区嵐山中尾下町62
嵐山遊覧船から約1.1km (徒歩約14分)

鈴虫寺(華厳寺)

鈴虫寺 紅葉鈴虫寺は、年間を通して鈴虫の美しい音色を楽しむことができる嵐山の観光名所です。「どんな願い事もひとつだけなら叶えてもらえる」という幸福地蔵も必見です。
拝観時間:9:00~16:30
所在地:京都府京都市西京区松室地家町31
嵐山遊覧船から約2.1km (徒歩約27分)


鈴虫寺 紅葉

鈴虫寺

住所:〒615-8294 京都府京都市西京区松室地家町31

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伏見の十石舟と三十石船

伏見の遊覧船伏見の遊覧船は、NPO法人伏見観光協会が実施するところの、三栖閘門と宇治川派流の船着き場との間を往復するサービスです。三栖閘門とは、旧伏見城の外堀だった濠川が宇治川に注ぐ地点にある閘門です。大正大洪水(大正6年9月30日に台風の影響で淀川および宇治川を含む上流河川が広域で氾濫した災害)の後に設けられ、治水と舟運に重要な役割を果たしてきた施設です。現代では舟運にかかわる利用はもちろんありませんし、治水面でも宇治川上流の天ヶ瀬ダムに役割が移っているために実質的な働きはほとんどありません。しかし伏見界隈が水運で栄えていた頃の面影を伝える産業遺跡としての風格は漂っています。宇治川派流は、観月橋の近くで宇治川から分かれて、伏見の中心部を流れたあと濠川に合流する水路です。遊覧船は20人乗りの十石舟と30人乗りの三十石船が運航されています。十石舟は月桂冠大倉記念館前を出発して往復約50分の遊覧、三十石船は4〜5月と10〜11月のみの運航で寺田屋前からの乗船(遊覧時間約40分)です。ともに三栖閘門前で下船しての見学時間が含まれており、近くの三栖閘門資料館(運営は国交省の淀川河川事務所、無料)に立ち寄ることも可能です。乗船料金はともに1200円で同じですが、大倉記念館前から出る十石舟の方が10分ほど乗船時間が長くなるぶん、遊覧運航自体を楽しむのであればお得感があります。また大倉記念館の付近は酒蔵と水辺に糸を垂らす柳の風景が魅力的なスポットなので、春季なら十石舟の方が圧倒的に美味しいと言っていいでしょう。三十石船の方は、遊覧それ自体というよりは、歴史の追体験というか、大型船の雰囲気を味わうといったところでしょうか。かつて伏見が水の玄関だった頃、こうした大型船には素性を隠した脱藩浪士(不逞浪人)が頬被りをして乗り合わせていたりしたのかも知れません。

「十石舟」月桂冠大倉記念館・裏乗船場

電話:075-623-1030
アクセス:月桂冠大倉記念館から約300メートル・月桂冠大倉記念館から徒歩約2分

「三十石船」寺田屋浜乗船場

電話番号:075-623-1030(乗船予約)
アクセス:大倉記念館から約500メートル・大倉記念館から徒歩約10分

宇治川・遊覧船

季節によって様々な風景を楽しむことができる宇治川では、秋になると遊覧船に乗って川沿いの美しい紅葉を鑑賞することができます。ベテランの船頭さんによる説明も受けることができ、ゆったりとした贅沢な時間を過ごすことができます。ご家族やカップル、友達同士など、どんなシチュエーションでも楽しむことができます。さらに、宇治川遊覧船にてお食事やおやつを楽しめるプランもありますので、ご希望であればあらかじめ予約をしておきましょう。

喜撰茶屋

喜撰茶屋では、お食事プランも用意されています。※下記のプランはいずれも10名より。予約制です。
電話番号:075-623-1030(乗船予約)
アクセス:大倉記念館から約500メートル・大倉記念館から徒歩約10分
所在地:宇治市宇治塔川13
電話番号:0774-22-1123
アクセス:京阪「宇治駅」より徒歩約10分・JR「宇治駅」より徒歩約15分
<舟内食プラン>
遊覧船にて、茶の葉弁当などといった宇治茶料理を楽しむことができます。
所要時間:約40分
料金:お一人700円+お食事代
<おやつタイムプラン>
宇治の上ほうじ茶と、抹茶わらび餅、桜餅などといった季節のお菓子を楽しむプランです。
所要時間:約20分
料金:お一人972円

宇治川観光通船

所在地:京都府宇治市宇治塔川4−5
電話番号:0774-21-2328((有)宇治川観光通船)
アクセス:JR奈良線「宇治駅」から徒歩で15分・京阪宇治線「宇治駅」から徒歩で10分
料金:乗合遊覧船(15分~20分):500 円

宇治川周辺の観光名所

平等院

平等院 紅葉10円玉硬貨のデザインとしても知られている平等院は、秋になると美しい紅葉で彩られます。平等院での紅葉の見どころは、阿字池の水面に映りこむ紅葉の様子です。日没後には夜間ライトアップも行われ、幻想的な風景を堪能することができます。

拝観時間:庭園8:30~17:30(受付終了17:15)・鳳翔館9:00~17:00(受付終了16:45)・鳳凰堂内部9:30~16:10※20分毎に各回定員50名、先着順に入ることができます。受付は9:00からです。
拝観料:庭園・鳳翔館:600円・鳳凰堂内部:300円
所在地:宇治市宇治蓮華116
電話番号:0774-21-2861
アクセス:JR奈良線「宇治駅」下車徒歩約10分


平等院 紅葉

平等院

住所:〒611-0021 京都府宇治市宇治蓮華116

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三室戸寺

三室戸寺は、別名「アジサイ寺」とも呼ばれるほど、美しい紫陽花を見ることができることで知られていますが、秋の紅葉も見事なものです。例年の紅葉の見頃は、11月下旬〜12月始めと京都市の中心部よりもやや遅いので、ピークを少し過ぎてからでも圧倒的に美しい紅葉を、十分楽しむことができます。

拝観時間:(4月1日~10月31日) 8:30~16:30(拝観最終受付16:00)・(11月1日~3月31日) 8:30~16:00 (拝観最終受付15:30)
拝観料:大人:500円・ 小人:300円
所在地:京都府宇治市菟道滋賀谷21
電話番号:0774-21-2067
アクセス:京阪電気鉄道「三室戸駅」下車徒歩15分・JR「宇治駅」からバスで「三室戸寺」下車徒歩すぐ

水上遊覧と港町の面影は歴史の彼方に

京都は内陸にある街ですので、ベニスや蘇州のような、舟による遊覧のイメージはなかなか浮かばないのかも知れません。淀川の水運が使われなくなって長い年月が過ぎていることもあって、港町伏見のイメージもほとんど消えていることでしょう。それでも、王朝時代には大堰川での船遊びは遊宴の花形でしたし、藤原公任の三船の誉れのようなエピソードも生まれています(車折神社の三船祭はその故事に因むもの)。また近世の交通史を繙くなら水運は京都の生命線でした。そうしたことも踏まえると、舟を使った京都観光というのも逆に新鮮に思えてきます。