11月は京都の紅葉がよく映える季節です。風土や気候を知って時節それぞれの見どころをご紹介します。

京都の紅葉シーズンは、年によっての違いはありますが、だいたいは11月と12月初旬です。しかし、南北に長いだけでなく、高低差もあるのが京都の風土。11月に限ってみても、前半と後半では色づく場所も異なってきますので、ベストに色づいたタイミングを狙うのなら目的地の絞り込みが大切になってきます。

紅葉・もみじ京都の地形を語るエピソードでよく紹介される話があります。東寺の五重塔のてっぺんに立つと、土地の標高と塔の高さを足して約80メートルぐらいの場所にいることになるのですが、それは松ヶ崎のあたりにいるのと同じ、なのだそうです。地下鉄松ヶ崎駅を思い浮かべてください。土地の標高が約70メートル弱なので、市街地のほぼ北端に位置する松ヶ崎にいると地面に立っているだけで五重塔のてっぺんにいることになる云々。この話の肝は言うまでもなく、京都の土地は北が高く、南に向かって低くなっているということです。加えて、行政区の京都市がさらに北の山間部へ延びていることを考えると、京都市の気象といった形で一元的に説明するのが難しいのが分かるはずです。京都の紅葉の見頃はいつ?という話になったとしても、念頭にあるのが洛北は大原のあたりなのか、洛南の伏見や城南宮のあたりを言っているのかで結論は変わってくるということです。それに年々によっての早い遅いといった揺れが加わりますので、実際にはもっとややこしくなります。とはいえ、よく訊ねられるそういう質問に対して、無回答で押し通すこともできませんので、京都を知る人たちがよく使うのが「だいたい11月から12月の上旬かな」と言う幅をもたせた言い方です。

紅葉のしくみ

ところで、ひとことで紅葉の見頃と言いますが、具体的には植物のどのような状態を指しているのでしょうか。これは生物学的に説明すると、葉の表面を占めていた葉緑素(クロロフィル)が破壊され、黄色のカロチノイドや赤色のアントシアニンが目立つようになる状態なのだそうです。要は、葉緑素の破壊が進む気象条件が整ったかどうかが紅葉のスタートラインであり、黄や赤の素が十分供給されているかどうかが鮮やかに見えるか濁って見えるかの違いなのだそうです。ここでは、結論的な部分だけを紹介させてもらいますが、日中の平均気温が10℃ぐらいまで下がり、朝晩で5℃を切るぐらいになるのが紅葉開始の条件、そして鮮やかに色づくためには適度な雨量と適度な日照時間、それに寒暖差がポイントなのだとか。つまり夏の終わりから秋にかけて秋雨と秋晴れがちょうどいい塩梅で繰り返され、朝夕の気温差が大きくなった時には、赤みが鮮やかに映えるようです。夏場の気温や降水量も影響を与えるということで、今年のように気温が高く、降水量も多い年は、鮮やかさが強まる可能性があります。

市内の紅葉情報が始まるのも11月になってから?

二条城の紅葉言うまでもありませんが、紅葉前線は北の方からだんだんと下ってきます。そして山の上など標高の高いところから低い方へと進んでいきます。これを京都に適用するなら、もっとも早いのは久多や花脊、もしくは京北のあたりでしょう。実際の紅葉開始がどうなるかはその年の条件次第ですが、久多や花脊の紅葉は一般論風に語られる「だいたい11月から12月の上旬」よりはワンテンポ早く、10月下旬ぐらいのイメージがあります。これが11月の月替わりの頃になると前線が高雄などの三尾エリアまで下りてきたり、早ければ大原もその範囲に入るようになります。三尾にしても大原にしても、名の通った紅葉名所を抱えるエリアです。京都市の話題を扱う新聞や情報サイトが、11月の月替わりを目安に紅葉情報の発信を始めるのもそうした傾向の反映なのでしょう。

11月中旬〜紅葉前線、市内に進入

これが11月の中旬になってくると、紅葉前線は市街地に入ってくるイメージです。具体的には北野天満宮、金閣寺、銀閣寺、府立植物園、清水寺などでしょうか。清水寺は東西のラインでいえば嵐山の渡月橋あたりと等しく、次のタームでも構わないのですが、山の中腹という上下の影響があるので11月中旬で紅葉を意識するようになります。

有名どころが出揃うのは下旬ぐらい?

嵐山の紅葉さらに進んで下旬になると、京都の紅葉名所は軒並み見頃を迎えます。繰り返しになりますが、実際は年々の条件次第で前後するので、これはあくまでのイメージでのことです。その前提で続けるなら、勤労感謝の日から月末ぐらいが永観堂ほかの東山界隈、円山公園、渡月橋や二尊院などの嵐山、東福寺などなど。そうした名所とされるところで紅葉状況を判断するタイミングとなってきます。

永観堂

古今和歌集に「モミジの永観堂」と詠まれるほど、古くから紅葉の名所とされてきた永観堂。紅葉に包まれているような多宝塔や「岩垣もみじ」が見どころです。【例年の見頃】11月中旬~11月下旬【所在地】京都府京都市左京区永観堂町48【電話番号】075-761-0007【拝観時間】9:00~17:00(最終受付16:00)※夜間拝観・17:30~20:30(拝観受付終了20:30、閉門21:00)【拝観料】大人:600円・小中高生:400円※夜間拝観(ライトアップ):一般(中学生以上):600円【アクセス】電車:地下鉄蹴上駅から徒歩約15分。バス:JR京都駅から市バス約25分、南禅寺・永観堂道下車徒歩約3分

円山公園

円山公園は、無料で散策できる上に比較的混雑の少ない紅葉の穴場スポットです。周囲には高台寺や清水寺などといった紅葉の名所が点在しているので、休憩に訪れるのもおすすめです。【例年の見頃】11月中旬~12月上旬【所在地】京都府京都市東山区円山町【電話番号】075-561-1350(公財・京都市都市緑化協会)【時間】自由に散策可能【料金】無料【アクセス】バス:祇園下車徒歩3分。電車:京阪祇園四条駅徒歩10分

渡月橋

嵐山のシンボル的スポットとしても知られている渡月橋。鮮やかに紅葉した山々を背景に撮影するアングルが人気です。【例年の見頃】11月下旬~12月上旬【所在地】京都府京都市右京区嵯峨中ノ島町【電話番号】075-861-0012(京都嵐山保勝会)【アクセス】電車:JR山陰本線(嵯峨野線)「嵯峨嵐山駅」徒歩約13分または、京福嵐山本線「嵐山駅」徒歩4分

小倉山二尊院

小倉山二尊院は「紅葉の馬場」と呼ばれ、紅葉の名所として知られています。紅葉のピークは11月中旬から11月下旬ですが、12月初旬に見ることができる「散りもみじ」も素晴らしいと言われています。【例年の見頃】11月中旬~11月下旬【所在地】京都市右京区嵯峨二尊院門前長神町27【電話番号】075-861-0687【拝観時間】9:00~16:30【拝観料】一般(中学生以上) :500円・小学生以下:無料【アクセス】電車:JR嵯峨嵐山駅から徒歩約15分。バス:JR京都駅から京都バス約45分嵯峨釈迦堂前停留所下車、徒歩10分

東福寺

数ある京都の紅葉の名所の中で最も人気が高いとされている東福寺。本堂と普門院、開山堂を結ぶ通天橋からは、紅葉の雲海のような素晴らしい風景を見ることができます。【例年の見頃】11月中旬~11月下旬【所在地】京都市東山区本町15丁目778【電話番号】075-561-0087【拝観時間】9:00~16:30(受付終了16:00)※11月~12月初旬・8:30~、12月初旬~3月は16:00まで(受付終了15:30)【拝観料】通天橋・開山堂:400円・本坊庭園:400円【アクセス】JR東福寺駅から徒歩10分または、京阪電鉄鳥羽街道駅から徒歩8分

清水寺

誰もが知るであろう清水寺は、紅葉シーズンにもまた人気が高いスポットとなっています。東山を借景としてそびえ立つこのお寺、清水の舞台として知られる本堂からは錦雲峡と呼ばれている圧巻の紅葉を望むことができます。反対に子安塔からは、その清水の舞台がまるで浮かび上がっているかのように見えます。(本堂は修復工事中であるため、訪れる際は要確認です。)【例年の見頃】11月下旬~12月上旬【所在地】京都市東山区清水1-294【電話番号】075-551-1234【拝観時間】6:00-18:00【拝観料】大人 \400/子供 \200【アクセス】市バス「清水道」・「五条坂」下車徒歩約10分

北野天満宮

自然林が今もなお残る境内西側の史跡御土居。四季折々の魅力であふれるこちらは、特に秋の紅葉シーズンを迎えると御土居一帯には菅公御縁の木々たちが約350本、樹齢350年~400年にもなる木々が数本、菅公の御神徳を仰ぐようにして美しく彩りを添えます。赤や黄色と鮮やかに染まった紅葉が紙屋川の水面に映り込む様子は、秋の趣を存分に感じさせてくれます。【例年の見頃】11月中旬~12月上旬【所在地】京都市上京区馬喰町【電話番号】075-461-0005【拝観時間】9:00-16:00(11/9-12/8は20:00まで)【拝観料】大人 \1000/子供 \500【アクセス】JR嵯峨野線「円町駅」から(西ノ京円町バス停)市バス「北野天満宮前」下車、すぐJR「京都駅」から市バス「北野天満宮前」下車、すぐ

高雄山神護寺

紅葉狩りで古くから名高い神護寺は、京都市内では最も早く紅葉の見頃を迎えます。。三門へと続く長い石段に沿うように色づいた木々たちが、美しいお出迎えをしてくれます。見頃を過ぎて散り落ちた紅葉たちが境内を埋め尽くす景色もまた美しく、時期をずらして二度楽しむことができるスポットとなっています。【例年の見頃】11月上旬~11月下旬【所在地】京都市右京区梅ヶ畑高雄町5【電話番号】075-861-1769【拝観時間】9:00-16:00 【拝観料】大人 \600/子供 \300【アクセス】JR京都駅からJRバス周山行きで50分、山城高雄下車、徒歩15分

高台寺

豊臣秀吉の正室であった北政所ねねが太閤秀吉の菩提を弔うために建てたとされる「ねね」ゆかりのお寺です。火事に見舞われ現在は開山堂などが残る形となっています。高台寺といったらライトアップが有名で広大な境内を彩る紅葉たちが幻想的な光に包まれて、昼間とはまた違った魅力を感じられます。【例年の見頃】11月中旬~12月上旬【所在地】京都市東山区高台寺下河原町526【電話番号】075-561-9966【拝観時間】9:00-17:30(受付は17:00まで)【拝観料】大人 \600/子供 \250【アクセス】JR京都駅より市バス206系統東山通北大路バスターミナル行20分、東山安井より徒歩5分

貴船神社

緑に黄色に赤にと、、、美しい紅葉のグラデーションが見られる貴船神社。本宮境内の見どころは休憩所「龍船閣」から一望できる景色、渓谷を彩る紅葉は圧巻の景色です。また、春日灯籠がつづく本宮参道から貴船口の一の鳥居まで存分に紅葉を楽しむことができます。【例年の見頃】11月上旬~下旬【所在地】京都市左京区鞍馬貴船町180【電話番号】075-741-2016【拝観時間】6:00~18:00(5月~11月は~20:00)、授与所9:00~17:00【拝観料】境内無料【アクセス】叡山電鉄鞍馬線「貴船口駅」下車徒歩約30分京都バス「貴船」下車徒歩約5分

三千院

静寂に包まれた世界で秋の趣を存分に味わうことができるのが、三千院。かつて建礼門院が隠棲したといわれる大原の山里、三千院はその高台に位置します。白壁に沿うようにして続く紅葉を眺めながら門をくぐると、今度は静かな堂内を見て楽しむことができます。そして一番の見どころといえるのが苔庭です。鮮やかだけど奥ゆかしい緑の苔と、真っ赤に色づいた紅葉の共演はここでしか味わうことのできない美しさを魅せてくれます。そんな苔の上に散り落ちた紅葉もまた、美しく、期間をずらしてもう一度見に行きたくなるスポットといえます。【例年の見頃】11月中旬~下旬【所在地】京都市左京区大原来迎院町540【電話番号】075-744-2531【拝観時間】9:00~17:00(12月~2月は9:00~16:30、11月は8:30~17:00)【拝観料】700円【アクセス】京都バス「大原」下車徒歩約10分

下鴨神社

小倉山二尊院は「紅葉の馬場」と呼ばれ、紅葉の名所として知られています。紅葉のピークは11月中旬から11月下旬ですが、12月初旬に見ることができる「散りもみじ」も素晴らしいと言われています。【例年の見頃】12月上旬~12月中旬【所在地】京都市左京区下鴨泉川町59【電話番号】075-781-0010【拝観時間】24時間【拝観料】無料【アクセス】京都市バス 下鴨神社前または糺ノ森前よりすぐ京阪電鉄 出町柳駅より徒歩約12分2017年の紅葉はかなり早くて、イメージより1週間から10日ほど前倒しになっていましたが、遅い年なら12月になってもまだ紅葉が楽しめるとかの話になっています。嵐山界隈では12月の上旬には嵐山花灯路が開催されています。当初は観光客の出足が一段落するタイミングに合わせて行われていた花灯路ですが、紅葉シーズンと重なることも出てきたのが昨今の傾向です。