泉涌寺には、たくさんの塔頭があります。西国三十三箇所の札所、今熊野観音寺や与一さんの通称で親しまれる即成院など。なかでも取り上げておきたいのが、鷹峯の源光庵よろしくの丸窓を備えた雲龍院。窓の名前も、源光庵と同じ「悟りの窓」。悟りが得られるかどうかはさておき、迷いの窓・悟りの窓は源光庵だけでのものではありません。
大きな寺院や有力な寺院の境内や近傍にあり、その寺に関連する小規模な僧房のことを塔頭と呼びます。この言葉は元来は禅宗寺院特有のもので、祖師の死後に遺徳を偲んで近くに建てた塔や僧房をそう呼んでいたのですが、いつしか他の宗派においても同様の使い方をするようになりました。禅宗のケースでいえば「妙心寺の山内塔頭である退蔵院や東林院あるいは境外塔頭の龍安寺」という言い方であり、他の宗派で使われるパターンでは「清水寺の塔頭成就院」などがそれに当たります。厳密な使い方に徹するのなら、他宗派では末寺や子院などの呼び方になるところですが、深く拘らずに広く塔頭と呼ばれているのが現状のようです。真言宗寺院である御寺こと泉涌寺も、塔頭寺院がよく取り沙汰される大寺です。泉涌寺については、御座所庭園を中心に見どころを紹介しました。今回はそれとは別に塔頭寺院にスポットを当てていきます。