
天下を統一した豊臣秀吉が新たな拠点として開発を進めたことで重要度が増した伏見エリア。以来、江戸時代から明治、大正、昭和にかけて、この地を舞台にさまざまな出来事が起きてきました。京都市に含まれる行政区の一つでありながら、京都に対するものとはまた異なった眼差しを集める伏見区の魅力をまとめてご紹介します。
古都探訪とは異なる眼差しで
酒蔵めぐり
伏見観光で、もっとも有名な設定となっているのが、おそらくは酒蔵めぐりではないでしょうか。月桂冠や黄桜など老舗の日本酒メーカーが蔵を並べ、特徴的な街並みを作っています。濠川沿いの白壁と緑の柳の取り合わせなど絵画的な美しさはさまざまな形で紹介されています。そうした街並みを歩いたり、記念施設(月桂冠大倉記念館、黄桜カッパカントリーなど)を訪れて試飲したりと、日本酒党にはたまらないツアーになっているのですが、このパターンも近世の産業史を紐解いていることに他なりません。近世史を歩く
御香宮神社
伏見稲荷大社と醍醐寺
さて、ここまで伏見エリアの歴史的な特性を意識しつつ行われる観光アプローチをご紹介してきましたが、空間的および機械的に伏見区を切り出した場合、ピックアップせねばならないのが伏見稲荷大社と醍醐寺です。前者は言わずと知れた稲荷信仰の総本山。もっともそうした習俗的な背景とは関係なく、千本鳥居が見せる幻想的な美しさを求めて海外から訪れる観光客が増えていることでも有名なスポットです。秋の彩りを求めるのであれば、千本鳥居を抜けてお山巡拝と呼ばれる行程(稲荷山の山中をぐるりと一周してくる参拝路)に入ってみれば、所々で美しい紅葉と出合うことができます。また後者の醍醐寺は世界遺産「古都京都の文化財」にも名前を連ねるスポットで、広大な境内では季節の味わいも存分に楽しむことができます。ただし、今年は台風の被害を直接受けてしまった関係から上醍醐の全面的な入山停止、下醍醐でも部分的に拝観停止が行われているため、訪れる前にホームページ等で最新の状況を確認する必要があります。

